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教えて

山頂に到着し、ゴンドラから下りる。その瞬間、下の乗り場よりも冷たい風に襲われ、ぶるっと身体が震えた。 華の過ぎた冬山の景色。澄んだ空気。茜色の大空。 展望台の鉄柵に手を掛け、夕陽の沈みきった空模様を、樹さんと並んで眺める。 「……何か、不思議」 「……」 「もう夕陽は沈んじゃったのに、まだこんなに明るいなんて。 見えないのに、まだそこにあるみたい……」 言ってから、恥ずかしくなる。酷く子供っぽい事を口走ったような気がして。 「………うん、そうだね」 静かに答える声。 寂しそうな、樹さんの横顔。 鉄柵に肘を掛け、何処か遠くを見つめていて……心ここに非ず、といった感じ。 ここに来てから、様子が変…… 不安に駆られ、樹さんの腕をきゅっと掴む。 「樹さん」 「………、ん?」 「何かあるなら……ちゃんと、教えて」 踏み込んでしまっていいのか、ずっと悩んでた。けど、こういう事は、目を瞑って先送りにしちゃいけない……ような気がする。 緊張と不安で、顔が強張っているのが自分でも解る。掴んだ手が、震える。 ドライブ中に隣で寝ちゃった事、本当は怒ってる……? それとも、僕の気付かない所で、何か嫌な事しちゃったのかな…… 「………ごめん」 細い息を吐いた後、樹さんが僕に顔を向け、眉尻を下げた笑顔を作ってみせる。 それは、本心を隠そうとするもので。 「……」 別に、謝って欲しい訳じゃない。僕に悪い所があったなら、ちゃんと言って欲しいだけ。 曖昧にされたまま突き放されるのは……もう、嫌だから。 「……」 ……でも、こんな事して、余計に嫌われたら…… 目を伏せ、樹さんから手を離す。 と、それを追い掛け、樹さんの手が僕の手をきゅっと掴んだ。 「……ごめん。不安にさせて」 驚いて見上げれば、樹さんの瞳が真っ直ぐ、一点の曇り無く僕だけに向けられていた。 「実雨にとって、余り気分のいい話じゃないから、言わないでいようと思っていたけど……」 「……」 「ちゃんと、話すよ」

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