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好きだよ

「──!」 ずっと抑えていたものが、胸の奥から迫り上がって……溢れていく。 ぼやけていく視界。零れる熱い涙。 僕の頬を伝って落ち、樹さんの肩を濡らす。 「……好きだよ、実雨」 耳元で囁かれる、優しい声。 その吐息が、擽ったい。 「もう……実雨しか見えない」 「……」 「実雨、だけだよ」 間近で僕を捕らえる、双眸。 涙で濡れる頬を、樹さんの長い指が優しく拭ってくれる。 「……キス、してもいい……?」 「……」 声が上手く出なくて、樹さんを見つめたまま、小さくこくんと頷く。 片手で僕の頬を包んだ後、親指の腹で僕の下唇をそっとなぞる。 「………良かった」 向けられた瞳に、熱情が孕む。 途端に、甘っとろく変わっていく空気。 柔く瞳を閉じて、樹さんに全てを委ねれば、唇に、柔らかな感触が宿る。 「……、っ」 蕩けてく── 触れた所が、熱くて、甘くて…… 「……は……ぁん、っ……」 僕を追い掛け、舌先がそっと差し込まれれば……キスが次第に深くなっていく。 くちゅ……、チュ…… ……はぁ……は、……ぁん……、 舌が絡まる度、漏れる熱い吐息。 少しだけ息苦しくて、瞳を閉じたまま──樹さんの脇腹辺りの布地を、キュッと掴む。 確信なんてないけど…… ……でも、樹さんが僕を好きって気持ちが、溢れる程に伝わってくる…… ……安心……する…… トサッ…… 布団に優しく倒され、僕の顔の横に片手を付いた樹さんが覗き込む。 逆光のせいで、顔に掛かる影。そこに、僅かな光を取り込んだ樹さんの瞳が、蜂蜜のようにとろりと甘く潤んで光る。 「……嫌だったら、ちゃんと教えて」 「………」 「無理強いは、しないから」 言い終わるか終わらないかのうちに、浴衣の合わせ目を開けられ、露わになる胸元。そこから覗く、ピンク色の小さな突起。その先端に、差し込まれた指先が触れ。軽く弾かれる。 「……っ、」 ピリッと身体に走る、快感。 喉元に顔を埋められ、空いた方の手が、僕の手首を掴んで布団に縫い付ける。 ……はぁ、はぁ…… 初めての時とは違って…… 少し性急だけど……積極的に、僕を貪って…… 「………あぁ…、ん……」 求められる度に──胸のドキドキが強くなって、止まらない。

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