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ごめんね

胸元から吊り上げられるように、ふわりと身体が浮き上がる。 息苦しくて顎先を天に向ければ……ひやっとした手のようなものが下り、僕の頬を撫でる。 『……実雨』 『俺を、忘れんなよ……』 少しだけくぐもった……酷く、懐かしい声。 遥か上空から聞こえたような、脳内で響いたような、何だか変な感覚。 薄く瞼を開け、その手に触れようとするけど、その前に僕から離れ、スッと消えてしまう。 ───大空(そら)……? そう、直感した。 樹さんとは違う手。 樹さんとは違う声。 ……だけど樹さんによく似ていて、何処か……優しい── 懸命に瞼をこじ開けようとするけれど、涙が邪魔して、その姿も、何もかも見えない── ………待って、大空……!! 心の中で叫ぶけれど、大空の気配はもうそこには無くて。 夢なのか幻なのか……それすらも解らない。 もし、本当に大空がいたとして──引き止めて捕まえた所で、今更、何を伝えようとしているんだろう…… ……僕はもう、樹さんを選んだというのに。 ──ごめんね、大空。 ずっと、大空の事……好きだったよ。 初めて大空を間近に捉えて、その笑顔を見た瞬間から──不思議と心が動いて。 それからは、大空の事ばかり見てて。大空の事ばかり考えてた── ……ごめんね。 あの時、ちゃんと伝えられなくて── ごめん……ね…… 朦朧とした意識を手放した瞬間。 大粒の涙が、つぅ……と一筋……目尻から零れ落ちた。

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