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永遠に…

この空気の中に、僕がいるのは変で。 この場を離れようと、樹さんの手をそっと解く。 ……と、それを許さないと僕の手を追い掛け、掴んで引き止める。 「実雨……」 「………お茶、煎れてくるね」 台所に捌け、入口の壁にもたれ掛かると、胸に手を当てて大きく深呼吸をする。 「………」 今日だけでも、沢山の事がありすぎて…… どうしよう……まだ、全然落ち着かない。 やかんに火を掛け、少しここで落ち着こうと、冷蔵庫と壁の隙間に収納された折り畳みの椅子を引っ張り出す。……と、視界の端に映る小窓が、やけに明るく感じて── ……カタンッ 窓を開けて見れば、外は眩い程真っ白な──雪景色。 はぁ…… 窓枠に両手を掛け、外に向かって息を吐けば……白い息が空気中に広がって、儚く消えていく。 ピンと張り詰めた空気。 静かで、幻想的な世界。 サッシに触れる手のひらと、外気に触れた鼻先が直ぐに冷え、頬が切れそうな程寒くてぶるっと身体が震える。 けど……構わず窓から顔を出し、灰色の空を見上げた。 「……」 ──雪って、氷の結晶だよね。 確か、凍雨(とうう)って名前の雪があった気がする。 雲から降る雪が、一度上空で溶けて、雨粒になって……それから再び凍ったものだって…… ……何だか、樹さんと父の事みたい。 徐に、窓から片手を伸ばす。 でも中々届かなくて。窓枠に掛けた手に力を込め、爪先立ちをし、思いっ切り身を乗り出す。 その指先──薬指の腹に、雪がふわりと舞い落ちる。 ──ねぇ、大空…… 大空が逝なくなって……あの時言えなかった想いはもう、二度と伝える事はできないけど…… ……でも、だから…… 大空を好きだったこの気持ちを、永遠に閉じ込めて……胸の奥に、大事に仕舞っておくね…… ──この雪のように。

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