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Ⅵ
コンビニで各々買った後、オフィス内にある休憩室で昼食を済ませる。
まだ出会って数時間なのにとても話しやすくてお互い会話を楽しみながら笑い合った。するとまた、鐘の音が鳴り午後の業務の始まりを知らせる。
基本、ピークで忙しくない限りは残業は無い会社な為ノルマをこなせばその日の仕事は終わり。
ただ、俺らは営業部。営業で外に出る時は会社に戻ってくる頃には定時を回る事もしばしばある。たまに直帰出来ることもあるがすごく稀だ。
研修期間中は社員全員残業をしない約束の為、今日からしばらくは定時ピッタリ上がりになっている。
「はぁー。とりあえず、ここまでかな。明日は営業で外に出るから、またよろしくね」
「ありがとうございます!小野井さんの教え方が本当に分かりやすくて感動しています。初めての営業、今から楽しみです」
ペコッと頭を下げながら、佐竹君がお礼を言う。
「そんな、佐竹君の飲み込みの早さに俺は驚きだったよ。また明日からも期待してる」
「そんなに言ってもらえてとても嬉しいです。小野井さん、あの…よければでいいんですけど、連絡先教えてもらっていいですか?」
スーツのポケットから携帯を取り出して俺に向ける。
「何かあった時に連絡できると助かるので、是非教えてください」
今度はより強く、俺にお願いをする。
眼鏡越しでも分かる。強い眼差しだった。
「いいよ。俺で良ければ何でも聞くし、何時でも連絡して」
自分の携帯を取り出して連絡先を伝える。
お互いの電話帳に番号が入った事を確認出来ると、俺は携帯を仕舞った。
「ありがとうございます!」
とても嬉しそうに携帯を抱えてお礼を言う。
(可愛いな…)
笑った顔が俺の気持ちを少し乱す。
可愛いと思うそれはきっと、自分の後輩としてだからと内に思う。いや、そう思いたかった。
まだ、俺は気づかないフリをする。それは傷ついた過去の自分を守るためだ。同じ過ちを繰り返して、願っても叶わない望みは捨ててしまった方が良い事を経験した。
(気づきたくなかった)
彼の笑顔を見つめ思う。
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