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XX
珈琲を一口啜る。
同じ様に佐竹君も珈琲を飲む。
また彼と飲めた。
「小野井さんは眼は良いですか?」
「んー。俺はどっちも視力は1.5はあったと思う」
「なら、よく見えますね!羨ましいです」
何でもない、他愛の無い会話を交わす。
再びと願って叶わないはずが過ごせた。この時間。
朝の30分。
時間が余るとこうやって二人で話してたなと何だかもう記憶が懐かしく思う。それは明日から仕事では別々の時間を過ごす事になり、離れ離れになるのを自分が拒んでいるからだろう。
思い出にしないといけないのに、したくないんだよ…。
「もう、研修期間もおしまいですよね…」
「そう…だね」
「ありがとうございます。短い間でしたけど」
あぁ、ほら、終わりを告げられている。
「いいえ。って、そんな大した事して無いってば」
「そんな事無いです!小野井さんのお陰で毎日本当に楽しく仕事を学べましたよ!」
「なら、良かった」
顔を隠すように両手でマグカップを持って笑う。チラリと佐竹君を見ると頬を赤らめていた。
「顔、火照ってるよ?」
大丈夫か?と佐竹君に手を伸ばす。
指先が肌に触れようとした直前に、手首を握られた。
「あっ…」
(しまった…)
佐竹君の大きく長い指が、俺の右手首に巻かれている。その掌は暑く、目が合うその顔はさっきよりも赤く唇は震えていた。
(眼鏡が無いと更にドキドキする…)
心拍は早くなる。
「す…、すみません!」
佐竹君はパッと手を離して、俺に深くお辞儀して謝った。
「あ、いや、こっちこそゴメン。いきなり、嫌だよな…」
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