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3.仮初めの距離(1)
「ああ、ちょうど良かった」
加治と共に学食から戻ってくると、教室の前でばったり瀬名に出くわした。
思わず「げっ」と言いそうになったのを辛うじて飲み込んで、「なんか用ですか」と端的に尋ねる。
すると瀬名は幾分表情を引き締めて、俺だけを見てこう言った。
「放課後で良いから、化学準備室に来なさい」
マジかよ、と心の中で呟いた俺の隣で、加治が小さく肩を竦める。
俺は内心舌打ちし、それでもひとまず「はい」と素直に頷いた。
「……つーか、ぜってぇおかしいだろ」
俺がわざわざ個別に呼び出しを受けたのは、恐らくはこのところ授業をサボりまくっているのが原因だ。自分でもその自覚はあったから、それについては今更どうも思わない。
だけど、それにしたって納得いかないことが一つだけあった。
「何で俺だけなんだよ。最近はお前だって結構サボってただろ」
放課後になり、帰り支度を済ませた俺は、改めて恨みがましく加治を見た。
しかし、
「そりゃ今日もいなかったからだろ。俺は一応出てたし、今日は」
そう言われると反論できない。確かに今日の化学をサボったのは俺だけだった。
「いやな予感したんだよ。何となく」
「それならそう言えよ」
「言ったらお前授業出たの?」
「………」
再び言葉に詰まった俺は、観念したように溜息をついた。やさぐれ気味にカバンを掴むと、加治もまた自分の荷物を肩に引っ掛ける。
加治はこれから部活だが、最初から途中までは一緒に行くつもりだったらしく、廊下に出てもしばらくは連れ立って歩いた。
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