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やっぱり波星は駄犬だ。
初めてしたお手。
「わんっ」
乗せられた手が可愛かったのに
「ちょっ、先輩?」
波星は俺をギュウギュウ抱き締めた。
側に居て?って言ったのが悪かったのだろうか?
調子に乗らせてしまったか?
チュッ、チュッ。唇にはしないが、顔中にキスをされて擽ったいし恥ずかしい。
でも、なんかスッゴイ嬉しそうだし千切れんじゃね?って位尻尾も動いてる。
どうやら波星にとってお手とは、手を握った後全力で甘えるらしい。
何故そうなった。
甘えても良いぞって合図と認識したのか。
まぁ可愛いから許すが。
「可愛い。永翔、可愛い」
違う、可愛いのはお前だ。
確かに俺は可愛くて綺麗で格好良いが、何だろう。
むず痒い。
波星に言われると嬉しい様な恥ずかしい様な、何とも言えない感覚になる。
赤くなる頬を誤魔化す為
「もう良いだろ?お終い」
慌てて波星から距離を取った。
これ以上されたら反応する。
欲しくなっちゃうだろうが、バカ。
「おはよう沙霧」
「おはよ」
「……………相庭、邪魔」
最近今迄以上に過保護になった相庭は朝迎えに来る様になって、ついでに一緒に朝食も取る様になった。
で、毎回波星が不機嫌になる。
まぁ理由は分かっているが。
「永翔、コッチ」
ポンポン、自分の膝上を叩く波星。
「ヤダ、コッチの方が座りやすい」
毎日相庭は移動の時抱き上げてくれるし、膝上に座らせて色々甘やかしてくれる。
なんか楽だし、慣れた。
まぁ別に変な気にはならないし心地良いし、何か問題でも?
「ほら」
口元にトマトを近付けられアーンって口開いてパクリ食い付く。
うん。美味しい。
膝上で食べさせて貰いながら背中を預けてると
「何?先輩」
波星が恨みがましい目で相庭を睨んだ。
お~お~。睨んでも可愛いだけだって波星。
威嚇する波星を完全にスルーし、相庭は俺に食べさせながら自分も朝食を口にした。
歯磨きも洗顔も着替えも何もかも全部周りがしてくれるから俺は任せっきり。
最近は使用人だけでなく相庭も手伝うから、以前よりもっと楽に早く便利になった。
ほんっと相庭は将来有望過ぎる。
唯の部下じゃなく俺専属の使用人兼秘書にしようかな。
って、秘書は波星がするから違う役職か。
う~ん、でも別に2人居ても良いよな?秘書って。
軽く悩みながら相庭を見てたら
「永翔」
遮る様に間に波星が入った。
相庭ばっかり見るなって事だろう。
はい、はい。お前の事もちゃんと考えてんし見てるよ。
ポンポン、頭に手を乗せると
「わんっ」
上機嫌に俺に抱き付いた。
速攻準備が遅れるから邪魔って、相庭に制されたけどな。
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