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2人が牽制してくれるお陰で
「沙霧様」
「沙霧様おはようございます」
「今日も麗しい」
声を掛ける人は多いが、無闇に近付く人達は減った。
どうでもいい奴等にベタベタ触られんのも、やたらと至近距離で話されるのも気持ち悪くて嫌だったから、これはかなり都合が良い。
この2人の側最高だ。
ってな感じで最近の俺はご機嫌だ。
そう、ご機嫌だったんだ。
「何?その駄犬」
バカ犬が現れる迄は。
「何回言ったら分かるんだ?ハルカ。俺は祥汰。早く覚えろって」
バンバン、軽くのつもりだろうがコイツの力は強い。
挨拶されたけど視界に入れたくなくて無視したら、しつこく挨拶されて余りの煩わしさにおはようって返した。
俺の名前は駄犬じゃなくて美純祥汰だ。きちんと呼べ!って命令されてムカついたから知らんって返したら、次は下の名前で呼べって言われた。
尚且つベシベシ背中を叩かれるし。
痛いし、なんか苛々する。
美純祥汰(みすみ しょうた)。
突然転校生として俺のクラスにやってきたバカ犬。
大声でキャンキャン無駄吠えするし、馴れ馴れしいし、ウザイ。
何より
「あっ、七海せんぱ~い」
波星に纒わり付くのがムカつく。
絶対語尾にハートが付いてんだろってツッコミたくなる位美純は波星に懐いている。
転校初日に俺のクラスに来た波星を見て気に入ったらしく、それからは毎日波星にベタベタする様になった。
基本波星は馴れ合うの嫌いだから煩わしくて無視しているが、めげないんだよなコイツ。
どんなにスルーされてもキャンキャン喚きながら向かっていく。
その姿は完全に小型犬が大型犬に突進している様にしか見えない。
コイツが来たせいで、コイツが纒わり付くせいで、穏やかな俺の生活は壊された。
毎日煩いし、心がざわつく。
「先輩、今日も格好良いですね」
当たり前だ。
波星が格好悪かったら天地が引っくり返るだろ。
ベッタリ波星にくっ付く美純にチクチク胸が嫌な痛みを訴えるし、スッゴクイライラする。
「屋上行きたい」
相庭に促し側を離れた。
「不機嫌だな沙霧。大丈夫か?」
屋上に着くなり自分の膝上に俺を乗せたまま座った相庭。
「なんで波星は綺麗な顔してんだろ。スッゴイ不細工だったら良かったのに。そしたら俺以外誰も波星を見ないから。あのバカ犬大っ嫌い。死んじゃえ。波星は俺の番だもん。波星に触って良いのは俺だけだ」
突然現れた部外者に自分の番が纒わり付かれるなんて不快でしかない。
可愛らしい容姿をしているって皆言ってるけど、小さいだけじゃん。
唯のロリショタじゃないか。
美純は童顔なのか小学生と言っても過言じゃない位幼い顔立ちをしている。
大きな瞳は小さい背丈のせいで余計幼さを際立たせているし、声変わりしてないのか?と疑いたくなる位声も高い。
どう見ても小学校高学年の女子にしか見えない。
尚且つそれを自覚しているのか仕草があざとい。
わざとらしく小首傾げたり唇尖らせたり拗ねてみせたり………って、キモイわ。
幼女がしたら可愛く見えない事もないが、男がしても萎えるだけ。
なのに一部の人間には効果覿面らしく、可愛い可愛い持て囃されている。
まぁ、波星には言われてないから大丈夫だが。
完全に拗ねた俺を宥める様に相庭はよしよし頭を撫でてくれた。
美純を視界に入れるのが嫌になったら、そっと側から離れて相庭にくっ付いて苛付きを消す。
毎日続けていたら何をどう勘違いしたのか美純に俺と相庭は恋人同士なんだなと言われた。
はぁあ?バカなの、コイツ。
相庭は俺の親友であって優秀な将来の部下だ。
恋愛感情なんか持ち合わせていたらこんなにくっ付けれるワケがない。
何をどう見たらそう見えるのか、本気で理解出来ない。
多分目が悪いんだな。
眼科をオススメしよう。
迷惑だと振り払ってはいるが、周囲から羨ましがられている波星。
羨ましいと妬むのなら無理矢理引き離してやれよ。
全く使えない奴等ばかりで嫌になる。
ソイツ等もムカつくが、それ以上に俺を苛立たせているのは波星だ。
もっと冷たく突き放せば良い。
無視するだけじゃダメだ。
そんな甘い態度ばかり取るから美純が調子に乗るんだよ。
いい加減理解しろバカ。
イライライライラ最近の俺は美純のせいでカリカリしている。
「ほらコレでも食べて落ち着けって」
相庭は俺に糖分を与えて苛付きを抑えてくれる。
本気で苛ついてムカムカして吐きそうな時は口移しで甘やかしながら食べさせてくれる。
優しくなでこなでこ頭を撫でてくれながら俺の苛付きと空腹を癒してくれる相庭は本当によく出来た親友だ。
それに引き換えバカ犬1匹さえ追い払えない波星は駄犬でしかない。
俺の番ならもっとしっかりしろ。
「あ~あぁ。相庭が番だったら楽だったのに」
不満を口にしたら
「もしたとえ俺が番でも、絶対お前はアイツを選ぶだろ?」
当たり前の事を口にされた。
確かにそうだ。
波星と相庭どちらと番になりたいかと聞かれたら即座に波星と答えれる。
拾ったあの日から波星は俺の物。
スッゴイ可愛いし、大切な存在。
誰にも渡したくないし、手放したくない。
相庭は好きだし、もし万が一互いに激しい欲求不満に陥って抱かれる様な自体に陥ったとしてもソレは唯の自慰の延長線上でしかない。
まぁ、気持ち良い事は好きだし相庭に甘やかされるのは大好きだから多分そういう雰囲気になったら普通にすると思うけどね。
断るの面倒臭いしさ?
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