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第1話
「おめでとう、こりゃ懐妊だ!」
……はあ!?
人間、驚いた時は目が点になるってほんとなんだな。
いやあ、今日はひとつ賢くなったよ、うん。
……じゃないだろ!
「俺もついにじいちゃんかあ。『じぃじ♡』って呼ばせて……」
「ちょっと待てよ、おっさん!このヤブ医者!」
「失礼な!ヤブじゃねえ!」
「俺はただの風邪で来たんだよ!」
そうだ!
この筋金入りの医者嫌いな俺が医者に来てんだから、今回の風邪はそれなりに辛かったんだよ!
胸がムカムカしたり、頭がフラフラしたり、かと思ったら食欲増大したりな!
「それなのに妊娠だあ!?ふざけんな!」
「ふーん……?」
「な、なんだよ!」
「じゃあ青生 には、心当たりはまったくないってんだな?」
「……は?」
「一度もそんなことした覚えはないってんだな?そういうことは!一度も!」
「うっ……そ、それは!」
そ、そそ、そりゃ、俺だって男だから?
好きな相手とか、恋人とかいれば、そういうことしちゃうし?
むしろあんな絶倫野郎が相手だったら、毎晩だってしちゃうし!?
でも、まさか。
まさかこんなことになるなんて思わないじゃん!
「うううぅぅぅぅ……!」
「たくっ……とにかく、こんな大事な診断間違ったりしねえから、早く相手に伝えて喜ばせてやんな」
そう言って、おっさんは俺を追い出した。
めでたいことだから金はいらねえ、とか珍しく太っ腹なこと言いやがって、ヤブ医者め。
「……ハァ」
マジか。
マジなのか。
マジで、この腹の中になにかいるのか?
アイツと俺のガキが?
それでもって、アイツが、
喜ぶって?
「んなワケないだろ……」
最悪、堕ろせって言われる……か、良くて逃げられんのがオチだ。
そうなるのが分かってて、ガキができたなんて、
「……言えるかよ」
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