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おまけ
それから、月日は巡り巡って――。
「てめえ、佑弥!」
「うわ!?」
風呂から上がって子供たちの髪の毛を拭いてやっていた佑弥は、突然のとび蹴りに激しく前のめりになった。恐る恐る振り返ると、そこには片足を上げたまま肩を震わせている愛しい番の姿。
「青生!?」
何事かと身構える佑弥の前で、青生が泣き崩れた。
「お前が好き勝手やりやがるから、またっ……できちまったじゃないかあ!」
なにが、なんて無粋なことは聞かなくても分かる。
佑弥は立ち上がると、まだ湿ったままの髪をかき上げた。
「じゃあまた賑やかになるな!」
「軽く言ってんなよ!産むこっちの身にもなっ……うお!?」
その時、地団駄を踏んだ青生の足がフローリングの床をつるんと滑った。
徐々に後ろに倒れていく身体。
「青生……!」
佑弥も咄嗟に腕をさし伸ばすが、その手が届く寸前、
「母さん!」
佑弥ではない力強い腕が、青生を後ろから支えた。
ホッと息を吐いた青生が見上げると、すっかり成長した長男が眉間に皺を寄せている。
「気をつけてよ、母さん」
「ん、悪い……」
曖昧に謝りながら、自分を立ち上がらせてくれる長男の動きをじっと目で追う。
生まれた時はあんなに小さかったのに、と寂しさも一瞬こみ上げるが、それ以上に――
「母さん?どうかした?」
「なんかお前、ますます佑弥に似てきたな」
「げっ!それだけはやめてよ」
心底嫌だと顔をしかめて否定するが、それがますます出会った時の佑弥を思い出させ、青生はなんとなく嬉しくなった。
「で……母さん。また、できたって?」
「うっ、なんか棘がないか?」
「ごめん、悪気はないんだけど、ついね」
こういう嫌味なところはあの涼兄にそっくりだ、と青生は思わずげんなりする。
「まあ、その、なんだ。お前にとっては六人目の弟になるから、また迷惑かけるけど」
「別にいいよ、もう慣れてるし。それに、嬉しくないわけじゃないから」
「そ、そうか!」
青生はぱあっと表情を輝かせて、長男の頭を撫でた。
もう子供じゃないんだから、と口では言いながらもどこか嬉しそうだ。
「もう、いいって。ほらみんな、もう寝る時間だよ」
兄の言葉に、弟たちは素直に返事をして立ち上がる。
総勢五人の弟をぞろぞろ引き連れて歩いていく姿は父親の佑弥より頼もしいな、と青生はこっそり笑った。
「青生」
「佑弥?」
子供たちが去っていくなり、佑弥はすぐに青生に抱きついた。一瞬振り払おうとして、でも佑弥の手が愛おしそうに腹を撫でるのを見て、すぐに止まってしまう。
相変わらずコイツには甘いな俺、とそんな自分に笑ってから、青生はよしよしと佑弥の頭を撫でてやった。
「なあ、また男に決定?」
「さあね。でもここまで男なんだから、次も男だろ」
「俺としては、そろそろ女の子も欲しい」
「どっちでも一緒だろ」
「そう?」
「佑弥と俺の子供ってことには変わりないんだから」
「そうだな」
「そうだよ」
視線を合わせたふたりはくすりと笑い合い、そして淡い口づけを交わした。
fin
***
なんと七人目は女の子でした!
「ななちゃんはかわいいでちゅねー」
「父さんキモいやめて!」
今度こそ本当に……fin♡
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