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第3話 出会い、そして再び1

人は死ぬ間際に走馬灯を見ると言うが、俺の場合、思い出したくないことばかりで、センチメンタルな気分にはなれない。  ただ俺を取り巻く空気だけは温かい。魂がふわふわ浮いているかのような心地良さだった。 眩い光を前にして反射的に目を開ける…… 知らない部屋の知らないベッドで横になっていた。 ここがあの世?天国?それとも地獄? 一体どこなんだろう。だが、病院でもない。 「あ、えっ…………っつう……いたぁぁぁ」 急に起き上がったせいで、後頭部に激痛が走る。ということは、一命はとりとめたということか。忌々しいが俺は生きている。 「あ、起きた」 小さな生き物が俺の膝へ乗り、顔を覗き込んできた。『小さな生き物』と表現した理由は、髪の毛の色がピンク色だったからだ。そんな色の子供はアニメ以外見たことがない。 服装も、これまたアニメのような民族衣装を身に着ていた。頭から足まで眺めた後、てっぺんに付いている犬みたいな耳をまじまじと見つめる。三角の耳が対で頭上に配置されていて、まるで犬みたいだと思った。 「お前、どこから来た?」 不思議そうに見上げた生き物は、俺に手を伸ばし、頬に触れた。ぺたぺたと柔らかく弾力のある肉球らしきもので探られる。掌以外は細い毛がうっすら生えていて、心なしかくすぐったい。しかも未知の生物は、話す言葉も聞く言葉も通じている。 「お前は毛が生えてない。耳もない。キノが拾ってこなかったら、もののけに喰われて死んでいたぞ」 「キノ…………?」 「そう、キノ。おいらの親代わり。お前にも名前はあるか?」 「俺は……まなと。朝倉眞人」 「マナト!!!おいらは、ルーク。よろしくな」 膝の上で小動物が嬉しそうに跳ねたため、頭に鈍痛が響いた。

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