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第6話

「確かに俺は日野を苛めていた。けれどすぐ止めたんだ。苛めを止めてからは一切接触していない。だから6年なんて長い期間苛めてない。中学では一度も同じクラスにならなかったし、顔も見てない」 素直に伝えよう。 そう考え告げたのに 「信じられないな」 冷たい眼差しで村主は俺を見た。 出逢った当初は見たくて堪らなかった侮蔑の顔。 だけど今は見たくなくて、胸が痛くて涙が溢れた。 「お願い。村主信じて」 何度も頼むのに突き放され 「…………村主」 俺は絶望に包まれた。 どうやって家に帰ったか分からない。 翌日起きたら発情期を迎えていた。 薬を飲むのも嫌だ。 もう何も考えたくない。 苦しい。 もう、嫌だ。 ボロボロボロボロ零れ落ちる涙。 その時コロン、机から何かが落ちた。 消しゴム。 村主の家で一緒に勉強した時に借りたヤツだ。 逢いたい。 逢って、笑顔が見たい。 倭京って優しく名前を呼んで欲しい。 村主、村主。 発情期でまともに働かなくなった思考。 フラフラしながら俺は村主の家に向かった。 呼び鈴を鳴らすと開けられた扉。 無理矢理押し入り鍵を掛け押し倒した。 「止めろ、倭京。触るな」 何も聞こえない。 「頼む。止めてくれっ」 抵抗する身体を押さえ付け、両手を縛りベッドの柱に括り付けた。 シャツを引っ張れば見えた綺麗な腹筋。 そっと触れると身体が熱くなった。 欲しい。 村主が欲しい。 ねぇ、欲しいんだ。 他の人からの愛は要らない。 お前だけしか要らない。 ねぇ、何も要らないから、だから、お前だけは俺を見て? 「離れろっ、止めろって言ってるだろっ!!」 ねぇ、何を言ってるんだ? 聞こえないよ。 ドクドクドクドク煩い心音で何も聞こえない。 一切反応していない村主の物に舌を這わす。 根気よくずっと舐めていたら固く勃ち上がったそれは凄く立派でクラクラした。 何も解していないにも関わらず収縮を繰り返す後孔は何か分からない粘液で濡れそぼっている。 初めてなのに悦んで村主を飲み込む其処は完全に女の子と一緒だった。 「好き。村主、好き。好き」 壊れた様に零れる言葉。 ねぇ、お願い。好きって言って? 倭京って、雨音って呼んで? 優しく触れて? どうして睨むんだ? どうしてそんな目を向ける? 向けられるのは殺意の篭った鋭い視線。 ゆっくり戻ってきた聴覚が音を拾う。 ジュブジュブ、グチュグチュ聞こえる水音。 俺が腰を動かす音。 甘い熱に浮かされた荒い自分の息。 「…………殺す」 耳に入ったのは聞きたくなかった台詞。 嫌だ。 嫌わないで? 「お願い村主、好きって言って?好きなんだ。村主が、村主だけが好き。……好き」 「嫌いだ」 聞こえる聞きたくない声に無意識に向かってしまう両手。 自分が何をしているのか分からない。 「お願い……すぐり…」 涙を流しながらグッ、両手に込めてしまう力。 なぁ、俺は何をしているんだ? 何故村主の首に手を回してる? 「一度で良いから。1回だけで良い。聞かせて?名前を呼んで?雨音って。好きって、お願い」 涙で滲んで何も見えない。 好きになってくれないなら、いつか他の誰かの物になってしまうなら、いっそ。 クッ。 喉の痛みから小さな声を洩らす村主。 聞かせて? ねぇ。 「…………………好き…だ、あま……ね…………」 ゆっくり閉じられた瞳。 俺を睨む瞳はもう其処にない。 冷たい声も、もう何も聞こえない。 ゆっくり後孔から抜き取る村主の物。 トロリ脚を伝い流れる液体。 ああ、此処に入ったんだな、村主のが。 愛しげにお腹を擦る。 「好きだよ、村主」 君の声は蜜の味。 耳に残る甘い声に浸りながら 「ずっと一緒だよ?」 ゆっくり唇を重ね、俺はカッターを手にした。

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