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第30話 俺の所属は、販促マーケ
「惚れるなって方が無理ですからっ」
ふんっと鼻息荒く言い切った網野に、ふと我に返る。
「知らねぇよっ。俺に惚れて、頑張ってたとか言ってっけど、チャラいの嫌いだって知ってんのに、誰かれ構わず、べたべたしやがって」
経理の女の子のマスカラを褒めていた網野を思い出した。
開発部のお局様にだって、そうやって尻尾振ってたんだろう?
「べたべた?」
網野は、疑問符の浮かぶ顔で首を傾げる。
「この前だって、経理の子の顔、マジマジと見てたじゃねぇか」
俺のコトを好きだというこの口で、他の女を褒め、キラースマイルをお見舞いしているんだ。
そんなに俺が好きなら、俺だけ気にしておけよっ。
……これは、ヤキモチだ。
わかってる。
嫉妬だ。独占欲だ。
ちぃせぇな、俺……。
「あぁ。俺、少しでも変わると気になっちゃうんですよ」
困ったように情けない笑みを浮かべた網野は、言葉を繋ぐ。
「でもそのお陰で、鞍崎さんの口紅にも気付けたし。そこだけは、こういう性格でよかったって思いましたよ」
キラースマイルを浮かべた網野は、するりと顔を寄せた。
――ちゅっ。
「でも、こういうことをするのは、鞍崎さんだけですから」
あーくそっ。
何なんだよ、この敗北感っ。
俺の敗けだっ、認めてやるよっ。
惚れた方の負けっ。
存在自体が反則だというなら、反則負けなのは、俺の方なんだろ?
所属部署も“はんそく・まぁけ ”だし、な……?
【 E N D 】
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