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第29話 俺は何故、怒鳴られてんだ?

「どっちが本物のお前だよ」  ユリさんから送られてきた映像に、頭を抱え悶えている網野。  俺は、思ったコトを、投げ掛ける。  言葉に網野は、不思議そうな瞳を俺へと向けた。 「普段、もっとスマートなイメージだったんだけど? 酒、抜けてねぇのか?」  普段の爽やかでスマートな網野と、昨日の夜から続く情緒不安定で感情的で、ワンコ臭の漂う網野。  ……ギャップ萌え狙ってんのか? 「大人の…余裕がある男が好きだって聞いて、…頑張ってました」  網野が、ぼそりと呟いた。  あーもうっ。  どんだけ情報漏洩してんだよっ。  いや、好きだけどな。  いっぱいいっぱいな息苦しそうなヤツより、なんでも楽しんでるようなヤツの方が、好きだけどな。  ……性格変えてまで頑張れとは、言ってねぇし、頑張りどころが違うだろ?  あまりにも駄々漏れな俺の周辺情報に、怒りを通り越して、呆れてしまう。 「お前なぁ、ユリさんっていう裏ルートから情報を仕入れるのは、反則だろ」  じとっとした視線を向ける俺に、網野は、しょぼんと肩を落とす。 「…あれか? 俺が朝イチ出勤してるから、お前も早く来てたりするのか?」  ちらりと様子を窺うような視線を向けた網野は、小さく頷く。 「俺がいるからって会社決めるとか、早く出社するとか…ストーカー1歩手前の反則……」 「鞍崎さん!」  俺の声に被せるように、網野が吠えた。 「俺のコト、反則反則言いますけど、俺から言わせれば、鞍崎さんなんて、存在自体が反則ですからねっ」  何を言い出したのかと、俺は、きょとんとなる。 「怒っても可愛すぎて反則だし、照れた顔も可愛すぎて反則だし、寝顔なんて破壊力抜群でしたからっ」  ……俺は、何を怒鳴られているんだ?

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