76 / 115
SS-4-4『温泉に行こう』
不安な気持ちを抱えたままで、仕事なんか捗る訳もなく…残業確定…。
こんな日こそ早く帰って先輩に会いたいのに…。
井上情報によると先輩、今日は本社から直帰するみたいでここに来る事は無いだろう。
とりあえず残業してから帰る事をメールで先輩に伝えた。
そして外部サーベイ、監査資料、委託関連資料…とやっつけていく。
「んー、この資料…何かおかしいなぁ…あれ、ページが抜けてる?」
あらら、紙でもらった資料の一部が無い。
柿崎さんはもう帰っちゃってるし…どうしよう…。
…明日にするか?…悩む…が、閃いた。
「田中さん!まだいるかな」
多分田中さんもこの資料持ってるはず。
そして、まだ社内に残ってるはず。
「もしもし、田中さん」
内線で呼べばすぐに応えてくれた。
「あぁ、志摩ちゃん。アレね、持ってるよ」
良かった。
「すぐに取りに行きます」
一方的にまくしたて、三階の田中さんの所へ。
「ぐっ…!」
気持ちが先行してバシンと自動扉にぶつかる…まあ、いつものアレだけど。
「志摩ちゃん、頼むよ。壊さないでね」
「田中さんがいてくれてよかった!」
「わざわざ取りに来てくれたところに水を差すようだけど…メールで送ったのに」
…ガーン…。
僕は紙でもらったけど、フツーはメールだよね。
「はは、運動ですよ!ありがとうございます」
バンっと再び扉にぶつかってから僕は事務机に戻った。
携帯で先輩からの連絡を確かめたが…返信なし、しかも未読。
そんなにマメに携帯チェックする人じゃないしね、と思い田中さんからもらった資料に目を通す。
うん、コレ。
そのタイミングではらりと小さなメモが落ちた。
日付が書かれたそのメモには先輩の名前も。
『 ○月✕日〜 アメリカ ロサンゼルス 柴田 』
は?これはどういう事?
アメリカの文字に僕は思考が停止してしまった。
ともだちにシェアしよう!