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SS-4-3『温泉に行こう』
あ〜、落ち込む。
会社で失敗するとか、誰かに怒られるとか、そんな事は確かに今日は無かった、よ。
でもね、先輩が本社に行くって知らなくて、それだけで何だか気分が沈む。
どうして教えてくれなかったんだろう…。
…うーん、良くない。
これはダメなヤツ。
パンッと両手で顔を叩き気合い注入!
するといいアイディアが浮かんだ。
本社の奴に聞いてみればいい!
俯いていた顔を上げ、キーボードを叩いた。
「ぎゃっ!」
本社の知り合いからの返信メールを開いて俺は奇声を上げてしまった。
「志摩、うるさい」
「すみません…」
柿崎さん、冷たい…。
僕にメールで連絡をくれたのは井上という名前の総務に在席する人で、あちこちに繋がりがあるある意味凄い奴。
同期ではないけれど歳が同じで僕とはウマが合い、時々連絡を取り合う。
「先輩のご両親…来てるのか…」
メールには、今日先輩のご両親が本社に見えている事が綴られていた。
先輩のご両親はアメリカを拠点に活動をしている研究者で、今はどこかの大学で教鞭を取りつつ研究開発をしている(はず)。
先輩が高校を卒業する頃、両親揃って渡米して行った。
先輩も学校が始まる九月には後を追うようにアメリカに行っちゃって…寂しかったなぁ。
…って、思い出してる場合じゃない!!!
もしかして…先輩まで海外に行くとか…?
…まさか…ねぇ…。
あぁぁぁぁ…不安しかない…。
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