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SS-4-6『温泉に行こう』

朝、隣に先輩の姿は無く…でも、よかった。 携帯に返信は入っていた。 「帰らなくてゴメン。今日は直接出勤する…か」 読み上げて、さらに落ち込む。 もう!こんな気分で働けないよ!! …と思いつつもワイシャツに袖を通す。 「先輩に…替えのシャツ持っていこうかな」 必要ないかもしれないけど、一応、ね。 自分が求められているのか、というより先輩に何かをしてあげたい。 ちょっと早い時間に出勤し、先輩が働く三階へ。 明かりがついているから先輩か田中さんが居るのだろう。 「おはようございます」 扉を開けて中に入ったが返事は無い。 「奥かな」 前処理室の扉の小窓から奥を伺うと、先輩と田中さんがいた。 昨日の事もありちょっと気まづい僕はドアを少しだけ開き、二人の話を盗み聞きした。 「…ウチの親と行くんです」 「へ〜ようやく親子水入らずになるわけだ」 「これでやっとスッキリする」 二人の会話は僕にとって聞きたくなかった話だった。 先輩…僕を置いてご両親のいるアメリカに行っちゃうんだ…。 もう、どうしたらいい? 先輩に持ってきた着替えのシャツにメモを付けて机に置き、僕はよろよろと自動扉を出た。 階段を歩いて登るが、途中でしゃがみ込む…。 …だって、涙で段差が見えない…。 そろそろ出勤者が通る。 人気の無い所で気持ちを落ち着かせないと…。 シャツの袖で涙を拭い、また階段を登り始めた。

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