79 / 115
SS-4-7『温泉に行こう』
「ぉはようございます」
始業時間ギリギリで入室した。
朝礼が始まり、連絡事項を確認する。
「…となってますので、ご承知おき下さい。他には…」
あぁ…話が入ってこない〜。
「…志摩ちゃん、終わったから」
柿崎さんに言われてデスクにもどり、パソコンのスイッチを入れた。
「志摩ちゃんぼけぼけだね。大丈夫?」
「…だ…大丈夫で…す…」
本当の事なんて言えないし…。
はは…と引きつった顔で答えた。
それから会議に出たり、書類を作ったり、仕事に気持ちを集中しだしたタイミングで部長から声が掛かった。
「志摩…急だったけど有給申請通したからお土産よろしく」
「あ…ハイ…」
…温泉…。
行く…って言っちゃってるし…行くよ…ね…(自問自答)
悶々としていたら十二時を知らせるチャイムが鳴った。
「あ〜先輩どうするんだろう…」
いつも昼休憩の連絡は僕からするんだけど…
「先輩から連絡くるかな?」
よし!今日は待ってみよう!
先輩から連絡が来るまで仕事を頑張ろう!
「志摩ちゃん元気ないね」
そろそろ終業時間。
見かねて…だろうな…柿崎さんが僕に声を掛けてきた。
「…そんな事…無いですよ…はは…」
「コレあげるから、ハイ」
「何か…すみません…」
目の前にゼリー飲料を差し出され、僕は有難く受けとった。
ちゅーっと空きっ腹にゼリーが入ると…ビタミン的な匂いが鼻から抜ける。
宇宙食ってこんなんかな?
パッケージにカロリー&ビタミンとプリントされていた。
「美味しい?」
「…お…美味しい…です」
柿崎さんが僕を優しい顔で見てる。
「少し元気になったね」
柿崎さんはそう言って、僕に手を振って帰った。
いい先輩だよね。
僕、何してんだろ?
急ぎの物は終わらせたし、僕も帰ろう。
帰って先輩と話をしよう。
ともだちにシェアしよう!