80 / 115

SS-4-8『温泉に行こう』

「ただいま〜」 会社を出る少し前に先輩に帰りますメールをしてから退勤した。 部屋に明かりが付いてるし、玄関に先輩の革靴があったからもう帰ってきている。 バタバタとリビングに急いだ。 「先輩〜」 「うわっ!」 むぎゅうぅ…と抱きつき、ふんふんと匂いを嗅ぐ。 「あ〜先輩の匂い〜」 「急に抱きつくとビックリするだろ!」 先輩の襟元に鼻を埋めて深呼吸。 いい匂い、安心する。 「志摩、これ土産」 弁当?しかも高級なやつ? 「俺は食べてきたから…志摩食べるだろ?」 未だにまとわりつく僕を引き剥がす事もせず…いつもの先輩だな。 「ありがとうございます」 先輩からお弁当を受け取りダイニングテーブルで広げると… 「こ…これ超有名な焼肉屋の高級弁当じゃないですか!」 テレビで見たことある店のなまえが入って、美味しそうなお肉がいっぱい…じゅる…ヨダレが…。 「じゃあ俺はまだやる事あるから…先に寝てて」 オレの頭にポンと手を置いて先輩は微笑んだ。 先輩…尊い…。 「それから、明後日温泉に行くから早めに用意しておけよ」 「…はい」 僕と弁当を残して先輩はリビングを出て行った。 今日は先輩と話をしたかったんだけど…もう明日でいいか…。

ともだちにシェアしよう!