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SS-4-9『温泉に行こう』
何てことだ!
朝出勤した途端、柿崎さんが血相を変えて電話をしている姿を目の当たりにした。
「…だから違うって言ってんだろ!」
おぉう、珍しい…キレてる…。
普段はめちゃくちゃ温厚な(←辛辣な所は置いといて)柿崎さんが声を荒立てている…。
…これ以上刺激したら…きっと山のような仕事を振られるに違いない…。
考えただけでブルりと震える。
そ〜っと椅子を引き、静かにデスクに着いた。
「あぁん?…オイ志摩!ちょっと来い!」
「は〜ぃ…」
柿崎さんに見つかって僕は柿崎さんの下僕になった。
僕は史料室で過去の文献や参考書類を探しだし、依頼書と報告書の中身を比較してその妥当性をあーだこーだと話し合い…連絡…そして何とか終息…。
最終的に担当営業に電話したのは僕なんだけどね。
もう、柿崎さんがずっと喧嘩腰だったから…。
結局は大した事じゃなかったんだけど、クレームまがいな物言いを他部署の人にされて柿崎さんがブチ切れた辺りから拗れたらしい。
よく説明すればすんなり分かってもらえたと思う。
柿崎さん、普段は温厚ないい人なんだよ?(二度目)
「何であんなに拗れたんです?」
「だって、悔しいじゃないか」
ぶすっと不貞腐れて僕と目を合わせない。
「同じ会社の人間にオマエの所の分析結果は大丈夫か?って言われたんだぜ!」
…う〜ん、そうだったのか。
柿崎さん、先輩の事、結構好きだもんね。
「そうだったんですね。ありがとうございます」
「けっ」
先輩の代わりにお礼を言ったがまだご機嫌ナナメ…ま、いっか!
さてと、仕事…ってもう午後じゃん!
今日はさっさと仕事を終わらせて旅行の準備ー!
今日の予定が…後ろに倒れて目の前が真っ暗になる。
僕は泣きながら…フルスピードで仕事を始めた。
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