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ドクンッ。泣いていたら煩く鳴り出した心音。どんな時も関係なしにくるんだな、発情期って。 こんな俺じゃ発情しても誰も抱いてくれない。 村主に抱いて欲しかった。 愛して貰いたかった。 ねぇ、村主。もう一度逢いたいって言ったら村主は逢ってくれる? 好きだって告げたら受け入れてくれる? 叶わないって分かってる。 でも、諦めきれないんだ。村主が好き。 ドクドクなる音を聞きたくなくて耳を塞ぐとコロンッ机から落ちた消しゴム。 村主から借りた物だ。 ああ、返さなきゃ。行かなきゃ俺。 フラフラ動く足。 頭の中がグチャグチャで何も考えられない。 要るのは消しゴムだけなのに、無意識にカッターやノート等机にある物を全て鞄に入れる。 足取りおかしく辿り着いた村主の家。 呼び鈴を鳴らすと開いた扉。 抗議の声を聞かず部屋に押し入った。 村主からする甘い香りに酔う。 「帰れ、今すぐ俺の前から消えろ」 村主が何か言っている。 ドクドクバクバク、鼓膜が壊れそうな位煩い心音で役割を果たさない。 何も聞こえない。 ねぇ、村主。何を言ってるの? なんで怒ってるの? 痛い。 何で殴るの? 痛いよ村主、止めて? 近くにあった紐で村主の両腕を縛るとベッドの柱に括り付けた。 ああ、これでもう殴られない。 あっ、でもこれじゃ抱き締めて貰えない。 でも俺が抱き締めたら何も問題ないよね? 甘くてクラクラする匂いのせいで熱くて堪らない。 胎内が有り得ない位村主を求めていた。 欲しい。村主が欲しい。 村主に愛されたい。 現状も村主の気持ちも、もう何も考えられない。思考を働かす余裕さえない。 唯、村主が欲しい。 後孔から溢れ出る粘液が太股を伝い、布団に染みを作る。 「何で?嫌だ。何で反応してんだよ。来るな、止めてくれっ」 あっ、嬉しい。村主も反応してくれてる。 俺だけじゃないんだ。村主も俺としたいって求めてくれてるんだね? 嬉しい。 「……………っ、あっ」 無理矢理押し入れた村主の物。 硬くて熱くて大きな質量がどんどん奥に入ってくる。 引き裂かれる様な痛みと痙攣に襲われる。 痛い。 流石に何も慣らさずは無謀だったらしい。 ゆっくり抜き差しを繰り返すと溢れ出る大量の粘液のお陰で痛みが和らいだ。 「ひぁっ、ぁ、ぁあ」 村主の物がある1点を掠めた瞬間、ビリビリ全身に流れた甘い痺れ。 怖かったが、其処に重点的に村主のを押し当てると 「ゃっあ、んぁ、ぁっ、村主。村主ぃっ」 有り得ない位の快感が全身を包み込んだ。 心が身体が歓喜する。 ああ、今俺村主と一つになってる。 「好き。好き。…村主、好きぃ」 想いが溢れて止まらない。 こんなにも幸せな気持ちになれるんだΩって。 嬉しい村主。 もっと、もっと愛して? 騎乗位で必死に腰を動かす。 気持ち良過ぎて甘えた声しか出ない。 何回か放たれた白濁が胎内だけでなく心迄満たす。 幸せだ。 漸く戻ってきた聴覚。 聞こえるのは酷く濡れた音とぶつかり合う音と自分の荒い息と媚びた様な甘えた声。 恥ずかしい。 村主は? 村主は感じてくれてる? 声が聞きたくて耳を澄ます。 「……や……ろ…離……消え……」 なんだろう? まだ上手く聞こえない。 「…嫌い……だ、…お前な……て…死……」 ……え? 「……殺……てや…る」 何…で? 途切れ途切れに耳に入ったのは甘い睦言ではなく、殺意の込められた言葉。 嫌だ、聞きたくない。 「お願い村主。嫌わないで?お願い。好きって言って?好きなんだ。村主が、村主だけが好き。……好き」 「嫌いだ」 嫌だ、聞きたくない。 聞こえる聞きたくない声に無意識に向かってしまう両手。 これ以上聞きたくないよ、村主。 自分が何をしているのか分からない。 「お願い……すぐり…」 涙を流しながらグッ、両手に込めてしまう力。 なぁ、俺は何をしているんだ? 何故村主の首に手を回してる? 首を絞めたら死んじゃうんだよ。ねぇ、ねぇ? 完全に混乱する思考。 手を離さなきゃいけないのに入っていく力。 自分で自分が制御出来ない。 「一度で良いから。1回だけで良い。聞かせて?名前を呼んで?雨音って。好きって、お願い」 目の前が涙で滲んで何も見えない。 優秀な村主は、いつか素敵なΩと結婚して幸せな家庭を築くだろう。 其処に俺は居ない。 そんなの嫌だ。耐えられない。 嫌われた自分は絶対に愛されない。 好きになってくれないなら、いつか他の誰かの物になってしまうなら、いっそ。 此処で死んで? クッ。 喉の痛みから小さな声を洩らす村主。 聞かせて? ねぇ。好きだって言って? 嘘でも良い。聞きたいんだ。 村主の声が聞きたい。 「…………………好き…だ、あま……ね…………」 震える声が愛を囁く。 ゆっくり閉じられる瞳。 俺を睨む瞳はもう其処にない。 力の抜けた身体。 ああ、もう…冷たい声も、何も……聞こえない。 ゆっくり後孔から抜き取る村主の物。 トロリ脚を伝い流れる液体。 ああ、此処に入ったんだな、村主のが。 出来るかな?赤ちゃん。 欲しかったな、村主との子供。 幸せになりたかった。村主に愛されて一緒にずっと笑いあっていたかった。 愛しげにお腹を擦る。 「好きだよ、村主」 好きだ。嘘だって分かってる。それでもそれは何よりも甘くて心を溶かした。 君の声は蜜の味。 耳に残る甘い声に浸りながら 「ずっと一緒だよ?」 ゆっくり唇を重ねると、俺はカッターを手にした。

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