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第2話

 この砦を預かっているのは、クロード・アズナヴールという人物である。  優しい亜麻色の髪を背に流した、優しげな美形で人気がある。物腰も柔らかく丁寧で、どんな下の兵士にも心を砕いてくれる人気の上官だ。  勿論そればかりじゃない。砦を預かる騎士である彼は武力も凄い。細身に見えるのに重い長剣を使いこなし、国境沿いに出る魔獣などを一刀両断にしていく。更には水の魔法も上級が使え、回復魔法も中級まで習得している。  レオンの同期などはよく「俺、クロード隊長になら抱かれてもいい」なんて、冗談か本気か分からないようなテンションで言ったりする。  それを聞くのが、けっこうげんなりなのである。  総司令室のドアをノックすると、すぐに「どうぞ」というやんわりとした声が聞こえる。声を返して入室すると、正面の執務机に向かうクロードが顔を上げて、にっこりと綻ぶような笑みを浮かべた。 「レオン、お疲れ様。町に異変はありませんでしたか?」 「ただ今戻りました。特に異常はありません」  報告書を手渡すと、クロードはその場でざっと目を通して確認用の判を押してくれる。これでレオンの仕事は終わった事になるのだ。 「お疲れ様、いいですよ」 「有り難うございます」 「レオン」  さっさと退散! そう思って踵を返したのに、レオンはしっかりクロードに呼び止められてしまった。 「なんでしょうか?」 「今夜、私の部屋に来ませんか?」  振り向いてクロードを見る。新緑を思わせる緑色の瞳がじっと、レオンを窺っている。大抵の人は気付かない陰りのある瞳を見て、レオンは深く溜息をついた。 「分かりました、伺います」 「待っていますね」  了承した途端パッと明るい笑みを浮かべたクロードを、レオンは内心溜息をついて見つめるのだった。

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