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第27話

「まだ1ヶ月も経ってないのにリタイアか。この人事にわたしがどれだけ頭を下げたと思ってるんだ」  オメガである統久が、宇宙警察始まって以来の異例の人事で、警察のエリート集団である海運捜査局の副局長になったのは、ひとえに総監である父の力だ。  統領抜擢の人事を足蹴にしたこともあり、一生辺境警備隊長かとも思っていた。  海運捜査局に就任してから運命の番である歩弓との接触もあるが、周りがアルファばかりなのもあり、感覚が鋭くなり過ぎていて身体がおかしい。    歩弓がここを離れるように背中を押してくれたのも、アイツも番のフェロモンに当てられて辛いせいだろう。通信機ごしの父親に諭され反論を考えるが、頭もボーっとしていて、このままじゃ自滅するのは分かる。 ヒート初日に桑嶋とセックスしたのに収束せず、すぐに再ヒートして、今漸く人と会話できるレベルに収まったのだ。 「本当に酷くなっているんだ。辺境じゃベータ型の同僚しかいないし、元に戻してほしい」 「それは年齢のせいだろう。番をもたないオメガは体が求めてヒート間隔が狭まってく。大体三十才を超えると三ヶ月に1度が一ヶ月ヶ月1度になるし、三十五才を過ぎれば常時ヒートしてる状態になる。確かに毎日アルファに接しているのも起爆剤かとは思うが、遅かれ早かれだ」  起爆剤とか、そんなもん簡単に起爆されちまったら、大変なのは俺じゃねえかよ。  遅かれ早かれの言葉に、統久は全身の血が凍るよう思える。 「大体悠長にしてるオマエが悪い。辺境でこれ以上鍛えたら、また婿候補に逃げられるだろ。番を捕まえさえすればその後は楽になるのだし、我慢しなさい」  それには否とは答えられずに統久は奥歯を噛み締めるしかない。本当にあと十年でヒートし続けるようになったら、それこそ目もあてられない。  それにどうやら親父は、俺に跡を継がせるのを諦めてはいないようだ。  ドクッと身体の中の血流がぐつぐつと粟立ち、統久は身を震わせ画面を睨みつける。   ……やべッ、またきやがった。 「わり……ッ、サイクルきたから……また、かける」

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