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※第32話

 まだ快感に酔ったままのような濡れた目は、それでも一生懸命に桑嶋を見返す。 「なんで?」  何故かと問われれば、視線がさまようように揺れる。ヒートの苦しみがなくなることは、抑制剤が効かない統久にとっては、甘いだけではない誘惑である。  喉から手がでるくらいの申し出ではあれど、拒む理由なのまったくないのだ。 「……ッ……あ、あ、ああ……だって……。おれ……を、すきだって……きいて、ねえ……」  統久自身、そんなことは子供を産むだけなんだし、どうでもいいはずだとずっと思ってきたことだった。   だけど、セルジュは誰でもいいとは思っていないから。だから、あの時誰でもいいと言った俺を問いつめた。だから、誰でもいいわけじゃないと……聞かないと、嫌いな俺を同情で番にするわけにはいかない。  それに俺は……俺が本当に愛しているのは、違う男だから。それを、告げないといけない。  桑嶋は、急に発せられた統久の必死な言葉に驚いたような表情で見返す。  強すぎる快感の波の中で、なんとか流されないように目を必死で目を見開く統久の顔を眺めると項にそっと唇をあてて、昨夜つけた痕を吸い上げる。 「オレは、アンタのことが好きだよ。……大丈夫」  桑嶋はズルッと胎内から張形が引き抜くと、背後から抱かれたまま脚を腕に絡めて開かせ、とろとろと注がれた体液があふれ出す。 「……好きだよ。だからオレのメスになれよ、統久」  名を呼ばれ腰を抱えられ屹立した肉にぐぶりと貫かれて、思わず統久は頷くと、まるで麻薬を打たれたかのように、ぐにゃりと視界がゆらいで身体中が歓喜するような感覚に吼える。  体の重みに深々と抉りあげられ、下腹部が熱をもったようにうねり始める。  桑嶋には、統久を救いたい気持ちも大きかったが、それよりも何よりもおこの男を自分のものにしたいという欲望が勝っていた。 「ッあ、ああ……ッく、ッメスに……してッ、かんで、ああ、かんでッ……くれッ」  心から好きだと思われて繋がれる相手なんて、この世にはいないと決めてた。愛されることなどないと。、決まっていると思い込んでいた。 「ああ、噛ませろよ……アンタはオレのモノだ」  脚を開かれたまま、腰を掴まれて追い詰められるようにガツガツと揺らされて悲鳴をあげたところで、項を舐められガリッと犬歯をたてられる感覚に統久は絶頂する。 「ヒッ、あァあああ……ァあああ」  頭の中心から背筋まで突き抜ける感覚と、全身を侵食していく感覚に、統久は捕食されたように痙攣を繰り返し、意識を闇へと奪われた。

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