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第18話

「店長〜、なんだかご機嫌じゃないすか?」  次の日、店頭でたたみをしている最中に八代くんに突っ込まれた。 「えっ? 普通普通。というか常に笑顔でいるのは基本でしょ」 「いや、笑顔っていうより、にやにやしてましたよ。今日店長絶好調だし。ナニ考えてたんですかー?」  下品な言い方に呆れて「君には教えません」と突っぱねた。  教えてくださいよーと唇を尖らせた八代くんだったけど、ちょうど顧客様が来店したのが見えたので、サッとその場を離れていってくれた。  僕は今朝から様子がおかしい。  森下くんとのデートが楽しみで仕方がないのだ。  もちろん、お付き合いなんて事はしなくていい。ただそばにいられるだけでいい。  そうやって割りきると、何だかすごく楽しくなってくる。  その変なテンションのせいか、いつもよりも張り切って接客をし、一人で売上を伸ばしていた。  今日は彼の店へ行こうかどうか迷っている。  昨日の今日で行ったらさすがにしつこいだろうか。  けれど会いたい気もする。  いや、嘘です、会いたいです。毎日でも。 「店長、このストックってどこにありますか?」  お花が散っていた頭をブンブン振って、アルバイトさんに視線を移す。  この間入ってきたばかりの大学生の女の子だ。  その手には折り畳みも出来るカーキ色のレインブーツがあった。 「あぁ、靴類は全てバックヤードの上段の棚にまとめて入っていますよ。もしかしてお客様お決まりですか?」 「はい。もし新しいのがあればそっちがいいって」 「そう。品番と中身をよく確認してね。良かったですね。お客様に購入してもらうの初めてじゃない?」 「はい、ようやく売り上げに貢献できました」  アルバイトさんは嬉しそうににこーっと笑って、バックヤードに入っていった。  授業が忙しくてなかなかシフトに入れないようだが、だんだんと接客にも慣れてきたようだ。  自分の声かけでお客様が購入を決めてくださるのはとても嬉しい。僕も初めて自分で物を売ったとき、なんとも言えない充実感が身を包んだものだ。  レジで売り上げを確認する。  レインブーツは単価が高い。あともう少し頑張れば、予算達成できそうだ。  ホッとしていると、靴箱を持ったアルバイトさんがやって来て蓋をあけ、お客様に中身を見せていた。カーキ色のレインブーツに間違いない事を確認する。  ベビーカーを片手に持ったお客様はバッグから財布を出す。二十代の若い主婦さんといった感じだ。  ベビーカーの中では生後半年くらいの可愛らしい赤ん坊が、スヤスヤと眠っていた。  夕方からは冷え込むみたいだから、レイアウトを変えてみようかと店の外に出たところで、僕は思わぬ人物に声をかけられた。

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