僕はずっと、人の気持ちに敏感なつもりだった。 　好きな人に振られてから、新しい人に出会うたび、本当のところは何を考えているのか、その言葉に嘘はないのか。 　敏感というか、自分も相手も傷つかないように逃げるのが普通だと。虚勢を張っていきていくのが普通だと思っていた。 　でも今目の前にいる人は、そんなことはしなくていいのだと教えてくれた。 　ありのままの、そのままの僕でいい。 　だから、こんな痴態を晒していても、気にしないのだと……。 「……あ──……」 　僕の腹と森下くんの手を、白濁の液が汚した。 　ひくひくと体を跳ねさせ、射精の余韻に内腿を震わせる。 　ぐずぐずに蕩け切った僕の体。もうこれが三度目の射精だ。自分の気持ちを解放しただけで、体までこんなにも素直になってしまって恥ずかしい。いくらなんでも、さっきから僕ばっかりイっていて申し訳なさすぎる。 「あの……僕はもう、いいですから……次は僕が、君のを」 「店長は病み上がりだから。今日は俺がするからいいの」 「ん、ん……っ」 　反論する暇も与えられず、またキスを仕掛けられる。 　今日だけで一生分のキスをしてるんじゃないかと思うくらいにずっとしている。息もままならぬ程に。 　キスをされながら胸の突起をきゅっとつままれると、僕は面白いくらいに腰を跳ね上げてしまう。そんなところで感じるだなんて知らなかったけど、少し力を入れて引っ張られてこすり合わされると、じんじんとそこから甘い疼きが広がって、あっという間に昂りを取り戻していった。 「ふ、ぁ……っ……やだ……」 「ここ、優しくするのと、ちょっと痛くするの、どっちが好き？」 　とっても意地悪な質問をされて、僕は唇を噛んだ。 　声を押し殺していても、そこに意識が集中してしまって、どうしても変な声が漏れてしまう。 　森下くんはわざと、僕の耳のそばでささやいた。 「ちょっと強めにすると、優しくしてる時よりも感じてる顔してるよ」 「や……ちが……」 「こうやってどんどん俺に知られちゃうんだよ。店長が隠してても、俺が全部暴(あば)いてっちゃうから」 　 　どこまでも澄み切る青空みたいな目をしながら、なんて生意気なことを言っているのだ。 　翻弄されっぱなしだ。 　森下くんを一目見た瞬間から、僕の人生は変わった。恋をして、どんどん知りたくて、でも知りすぎるのは怖くて。 　ただ、そばにいられたらいいって思い込んでいた。店にランチを食べに行って、料理を運んで来てくれる森下くんに笑いかけてもらえるだけで、それだけでいいのだと思っていた。 　けれど君が、こうなるきっかけを作ってくれたんです。 　ありがとう、本当に。 「ありがとうございます……」 　隠さないで、素直に気持ちを伝えてみる。 　熱い涙がこめかみへと道筋を作って溢れた。