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第9話

◆◆◆ 青藍は夢を見ていた。 幼い頃の夢。幼い頃の事は思い出さないようにしていたのに、どうしてだろう?夢の中でも辛くないのだ。 弟が居て祖父が居て、そして隣に可愛いアンバーが居る。 その手を握ると温かくて、安心した。 ◆◆◆ また、目を開けると成長したアンバーが自分を見ていた。 「あれ?」 風呂に入っていたのに今いるのはベッドの上。 そして、アンバーと手を繋いでいるのに気付く。 視線が手にあるのでアンバーが「これか?お前が握ってきて離さなかったんだよ」と言われた。 「お前、明日、日本に戻れ」 「えっ?」 「もう解決したんだからここに居る理由ないだろ?」 「……そうだけど」 青藍はアンバーの手を強く握る。 「アンバーとはもう会えないのか?」 何故か泣きそうになって聞いた。 「なに?レイプした俺と離れたくないってか?」 ふざけたようにわざと言う。 「き、気持ち良かったからあれはレイプじゃない!」 勢いで言ってしまい、顔が熱くなる。 その言葉でアンバーは大笑いした。 「合意の上でいいのか?」 「いいよ……さっきのも合意の上でだし、それに」 青藍はアンバーを引っ張り、抱き着いた。 「こ、これからも……き、気持ち良くしてくれるならやってもいい」 と言った。 「何、その、上からな言葉」 くすくす笑う。 「だって、恋愛経験ゼロだからどう言っていいか分からない」 「なるほどな……」 アンバーは青藍の上に乗ると真っ直ぐに彼を見つめて「俺はお前に言えない汚い事をたくさんしている、俺の側に居るとお前だって、染まるかも知れない」と言った。 「青から琥珀色に染まるならいいよ」 青藍は彼の首筋に両手を回した。 「それなら、俺も青に染まるのも悪くない」 そう言ってキスを落とした。 ◆◆◆ 「なあ、パスポートないんだけど、どうやって通るんだよ」 青藍は真顔で隣に居るアンバーに聞く。 「あー、心配ない、裏から手を回しているから」 「は?」 青藍は眉間にシワを寄せる。 「裏からって……」 注意しようとアンバーを見ると彼が立ち上がり手を誰かに振っている。 その方向へ顔を向けると長身で高そうなスーツに身を包み、サングラスをした男性がこちらへ来ている。 「日本の力あるyakuzaだよ」 「はあ?」 思わず声が大きくなる。 「あああ、アンバー、ヤクザって分かってる?僕は警察官だからそういう人とかかわり合うと大変な事になるんだ!」 焦るように言う。 「それは建て前だろ?繋がってるだろ、世の中、思うより汚いって言っただろ?」 ニヤリと笑うアンバー。 「そういう事じゃない!ちゃんと手続き取って帰る」 青藍がそう言った瞬間に男性が目の前にパスポートを出した。 「ちゃんと手続きしたパスポート」と付け加えられた。 「ど、どうも」 礼を言って受け取ると「青藍、気付かない?」とアンバーに言われた。 何が?とキョトンとなる。 目の前に居る男性がサングラスを取った。 その目の色を見て青藍は固まる。 「あさ……ぎ?」 自分と同じオッドアイの目の色。 「久しぶり」 彼はニコと微笑む。 「大きくなっているからわからなかった!!」 驚いて叫んだ言葉だが、アンバーと浅葱が大笑いして、自分の言葉が恥ずかしくなった。 「君も大きくなっているんだよ?」 アンバーに頭を撫でられて真っ赤になる。 「迎えに来たんだよ、アンバーに言われて」 浅葱の言葉に「えっ?いつから知り合いなの?」と聞くと「あー、いつだっけ?5、6年前?」と言われ「はーーー!なにそれ?!!」とまた叫んでしまった。 「アンバー、日本に来る時うちに泊まるけど?」 「えっ?アンバー日本に来てたの?」 「来てた」 「えー、」 なんか、知らない自分が寂しくなって、声が小さくなる。 するとアンバーから抱きしめられた。 「俺と浅葱はずっとお前に会いたかったんだ」と言われた。 浅葱も「警官になるんだから声掛けられないんだよなあ」と頭をかく。 「あー、そうだ、ヤクザってなんだよ!」 「引き取られた先がたまたま」とニッコリ笑う。 「でも、浅葱の組みは悪さしてないっていうか、裏の手引きしているから付き合ってもどうにもならないと思うけどな」 アンバーに言われて、なんだか力が抜けた。 ようやく会えた弟と初恋の人。 これはこれでハッピーエンドなのかも知れない。 「これからは日本に行く時は青藍の部屋に泊まるから」 アンバーは浅葱の目の前でキスをする。 弟に見られた青藍は慌ててアンバーを押しのける。 「こここ、これはな」 なんとか誤魔化そうとする。 「やったんだろ?アンバーに聞いた」 その言葉に青藍はアンバーを睨む。 「いいじゃん、別にお互い好きなら」 そう言われて一気に意識してしまった。 そうだ、好き……。好きだと意識してしまった。 アンバーから耳元でアイシテイルと囁かれ。また顔が真っ赤になった。 ちくしょー!!僕も好きだ……と今度アンバーが日本にきたら言ってやろう!!と青藍は思ったのだった。 完結

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