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白いベッドの上、点滴をされたまま目を覚まさない人間。 サラリ髪を撫でると、ふわり甘くて柔らかな香りが周囲に漂った。 嗚呼、この匂いは嫌いじゃない。 俺はそのまま病室を出た。 彼に出逢ったのは学校帰り。 公園付近でぶつかった。 歩きながら参考書を見ていた俺と真っ赤な顔でフラフラ歩いていた彼。 互いに注意散漫だった為衝突した。 危ない。そう思った時にはもうその人は倒れていて、意識を失う直前 「うっわ。スッゲェな、お前」 呟かれた。 スッゲェって、何が? 不思議に感じたが、そのまま放置するワケにはいかない。 自宅に連れ帰った。 彼の名前は倭京雨音(わきょう あまね)。 凄く綺麗な顔立ちをしていた。 甘くクラクラする香り。 側に居ると理性が壊れそうになるが、彼の匂いは心地良くてずっと嗅いでいたい香りだった。 雨音は人付き合いが苦手らしく、笑い方も接し方も分からない。 優しい言葉や笑顔を見せるとスグ真っ赤になって俯いた。 面白くて時折チョッカイを出す。 その都度見せる反応は異常な位可愛くて、愛しいとさえ感じた。 毎日毎日逢いに来る雨音。 本当は受験生だし勉強に集中しなければならないのに、雨音の声が仕草が全てが可愛くて受け入れていた。 俺が勉強している間静かにしていた雨音だったが暇だったのだろう。参考書を手にした。 復習は基本なので、俺の本棚には高校だけでなく中学3年間を総まとめした参考書もある。 中学の纏め本に目を通す雨音。 必死に読む姿に 「ココはこう。そう。なら次はコレ解いてみて?」 いつの間にか俺は勉強を教える様になっていた。 教える事は復習にも繋がるし、無駄にはならない。 始めは全く理解出来なかった雨音だが、本来頭は悪くないのだろう。 あっという間に色々な事を理解した。 自分の勉強の合間に勉強を教えたり、他愛のない話をする。 気が付くと俺は、いつも足早に下校する様になっていた。 早く逢いたい。 逢って、笑顔が見たい。 「倭京」 名前を呼ぶとふわり綻ぶ顔。 余りの可愛さに、ドロドロに甘やかしたくなる。 雨音と一緒に居る時間は幸せで、それはずっと続くと思っていた。 だがそれが壊れたのは 「……え…?」 俺が従姉妹の名前を言った瞬間だった。

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