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第5話
「おはよう」
翌日笑顔で挨拶する三浦を
「……おはよ」
つい軽く睨んでしまった。
「どうした、寝不足か?」
「青葉から聞いた」
「なぁ~んだ、バレたのか」
ちっとも悪びれてない三浦にムスゥって膨れた。
「お前何してんだよ、マジで」
「ハハハ、ごめんごめん。いや、最初は断ったんだぞ。俺お前の親友だしさ?」
何故疑問形。
「でも」
「でも何だ?」
「お金には負けました」
うん。そうか。
そうだよな。俺だって逆の立場なら負ける。
尚且つ将来安泰だしな。
「もうバレたから続けないよな?」
「いや、契約破棄したら色々損だから続ける」
うん。そうか。
じゃねぇ!!
「はぁあ?俺もうヤダかんな。私物提供」
「まぁまぁ。毎日新品使えるんだから良いじゃん。支障ないしさ?」
まぁ、そうだけど。
なんか、嫌。
「ねぇねぇ。何の話?」
ヒョコッ、2人で話してたら入ってきた凛茉。
慌てて
「えっと、昨日のドラマの話。な?」
三浦に話を合わさせた。
「そうそう。葵ちゃん可愛かったよな」
「え~?僕見忘れた。観れば良かったぁ」
ふぅ。良かった。どうにか誤魔化せた。
いずれバレそうな気がするが、まだバレたくない。告白された事。
凛茉とだったら俺は攻めだが、青葉とだったら多分…考えたくもないが絶対俺が受けだろう。
可愛い言われたし。
うん、無理。
俺タチだもん。ネコ嫌。
今日の2限目は体育。
コレも青葉の所に行くのかな?
着ている体操服を軽く摘むと
「それ後で交換な?」
……っ。
こそっと耳打ちされた。
うん、やっぱそうくるか。
ていうか、耳打ち止めろ。ゾクってするんだよ。
コイツは分かっててやってんじゃないのか?疑いたくなる。
どうやら俺は耳が弱いらしい。
凛茉の声は可愛いから大丈夫なんだけどなぁ。
低音ボイスは苦手だ。
昨日バレてから青葉は完全に開き直ったらしく
「せんぱ~い」
普通に声を掛けてきた。
「ほらコレ」
「わぁ、ありがとうございます三浦先輩」
当たり前の様に先程の体操服と何故か無理矢理脱がされた靴下が入った袋を青葉に手渡す三浦。
もうコレ直接俺が渡したが早くね?
「っ、ちょっ、三浦先輩マジですか。ありがとうございます」
中を確認するなり目を輝かせながら喜ぶ青葉。
一体何に驚き喜んだんだ?
「早速今日家で使わせて頂きます」
体操服なら一昨日も手に入れただろうに、何をそんなに驚いてるんだ?
それに使うって、何だ?
「そうか、そうか。そんなに喜んで貰えるなら毎日渡すな、靴下」
…………………………は?
靴下?
えっと、そういえば青葉体操服は抱き枕みたいにして使うんだよな。
なら、靴下は?
一体何に使うんだ?
椅子の下にカバーみたいに使う、とか?床が傷付かない様に。
んなワケないよなぁ。
「なぁ、青葉」
「なんですか?先輩」
上機嫌の青葉は輝かせたままのキラキラオメメを此方に向けた。
あれ?なんか可愛い。
「それ、何に使うんだ?」
「え、コレですか?」
うん、ソレ。
何だろう?気になって真剣に尋ねたら
「秘密です」
今絶対語尾にハートが付いたなって位嬉しそうに青葉は微笑んだ。
「ねぇ、かずちゃん。誰その人?」
3人で話してたら近寄って来た凛茉。
慌てて袋を隠させた。
嗚呼、出逢って翌日でバレた。
「はじめまして白水先輩。1年の青葉時雨です。鳴海先輩と三浦先輩にはいつもお世話になっているんです」
な、何をとかは言うなよ?
「かずちゃんとみうちゃんとお友達なんだぁ。なら僕も仲良くする」
ニコニコ可愛く笑いながら青葉に握手を求める凛茉。
「はい。宜しく御願い致します」
笑顔で握手に応じたが、怖いよ青葉、目が全然笑ってないって。
凄みと威圧感半端ないから止めて?
ゴゴゴゴゴォってなんか怖い効果音聞こえそうだから止めて。
「ねぇ、3人はいつ知り合ったの?」
ちょっ、凛茉あんまり聞くなって。頼むから。
「鳴海先輩とは入学式に、三浦先輩とはその翌日ですね」
いや、入学式はお前だけだろ。
俺お前を知ったの昨日が初めてだぞ。
「鳴海先輩似てるんですよ」
「えっ、えっ、誰に?知りた~い。教えて」
ちょっ、凛茉喰い付き過ぎ。
そんなに近付くなって。
「……………………まだ……秘密です」
誤魔化された。
って、教えないなら言うなよ。気になるじゃんか。
「え~。何それ教えて?ちょっとだけで良いからさ?」
こういう時凛茉は役立つ。
普通の人なら聞けない雰囲気でも空気読まず聴けるから。
図太いとかじゃないぞ?
普通に読めないんだ、空気が。
まぁ、そこも可愛いんだが。
「なら少しだけですよ?小学校の低学年の時知り合った人にです。すみません、もうこれ以上は秘密です」
人差し指を自分の口元に寄せ微笑む青葉は、男の俺でも赤面する位妖艶だった。
「むぅ~。分かった」
って、動揺してんの俺だけだ。
凛茉も三浦も全然赤面してないし、普段通り。
ドキドキしてんの俺だけかよ。
って、違う。
これは凛茉に告白されたのバレたらどうしようってハラハラしてるんであって、断じてときめいたとかじゃない。
ふわり向けられた笑顔。
「…………っ」
完全に茹でだこみたいになってしまい、慌てて顔を逸らした。
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