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第8話
疲れた。
授業中にも関わらず俺は机に倒れていた。
予鈴が鳴ったから解放されたけど、昼休みじゃなく放課後とか時間に余裕がある時だったら本気で危なかった。
沢山唇や背中や首をキスされて舐められた。
まだ三浦に舐められた耳が熱い。
中途半端に高められた身体から熱が引かない。
息はまだ甘く、目は蕩けたままだ。
こんな状態じゃ授業に集中出来ない。
教室の声がBGMみたいに流れる。
「鳴海、鳴海。どうした?気分悪いのか?」
ん?何だ?
顔を上げると、皆から集中されていた。
今は英語の時間。どうやら俺は当てられていたらしい。
嗚呼、そういや今日は日付的に当たられる日だった。
この英語教師は毎回日付と出席番号が同じ人をよく当てる。
いつもはスグ答えていたのに、今日は机に伏せたまま微動だにしなかったからだろう。
心配された。
「………………………………っ!!」
ん?
なんか皆の視線がビックリした顔になってんだけど、何だ?
ゴクリ唾を飲む音や、ヤバイな、可愛い、エロい、勃ったとか不思議な単語も聞こえる。
一体何の事だろう。分からなくて首を傾げると
「ヤッベ、鳴海エロ過ぎだろ」
「抱きてぇわ、マジで」
なんか不穏な声が沢山耳に入ってきた。
何だ、コレ?なんか怖い。
身体の熱と理解不能な状況に潤む瞳。
突き刺さる様な視線が怖い。
「……っ、や」
ポロリ涙が零れた。
「だ、大丈夫か?」
俺が泣き出した事で焦ったのか、真っ赤な顔で吃る先生。
袖口で涙を拭きながら
「…………すみません。保健室行きます」
小さく声を絞り出した。
ゆっくり立ち上がろうとしたが、震えているのか力が入らない。
「先生、俺が連れて行きます」
三浦が手を上げた瞬間
「………………先輩っ!!」
勢いよく教室の扉が開き、青葉が駆け付けた。
「大丈夫ですか?先輩。身体熱いですね。安心して下さい。俺が助けます」
顔を見るなりすぐ額を触った青葉。
助けます宣言をした直後
「ふぇ?ちょっ、ちょっ、青葉ぁ!?」
俺は青葉によりお姫様抱っこされていた。
で
「熱があるので保健室に連れて行きます」
英語教師に告げると、そのまま教室を出た。
俺も教師も皆も何が起きたのか分からず一瞬固まる。
その後
「ちょっと君、学年違うだろ。授業はどうした」
焦った様な声が背後から聞こえたが、青葉は無視してそのまま歩みを進めた。
急いで走ってきたのか軽く乱れている息。
ドクドク聞こえる鼓動。
何故分かったのだろう。俺が保健室に行くって。
何故こんなに汗流して迄走ってきてくれたのだろう。
全て分からなかったが、あの不快な空間から助けだしてくれた。
俺は
「ありがとう」
青葉の胸に顔を埋めた。
あっ、なんか良い匂いする。
走ってきたにも関わらず汗の匂いではなく甘く上品な香り。
イケメンは匂い迄イケメンなのか。
羨ましくも感じたが、青葉の香りは好きだ。
そのまま心地良い甘さに身を委ねた。
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