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三浦壮嗣の憂鬱 2
「白水凛茉。仲良くしてね?」
明るい声で挨拶した白水は何処からどう見ても女子にしか見えなかった。
入学以来ずっと空いていた鳴海の隣の席。
其処は長引いたインフルエンザのせいで全く学校に来れなかった白水の席だった。
可愛らしい外見と声、明るい性格の白水はあっという間に学校に馴染んだ。
完全に女子にしか見えない外見は潤いのない学校で唯一無二のアイドルみたいな存在になった。
デレデレ鼻の下を伸ばす沢山の奴等、ハッキリ言ってキモかった。
そして白水に傾いたのは飢えきった狼どもだけではなかった。
「どうしよう?三浦。俺、好きになっちゃった……かも。白水な事」
昼休み、真っ赤な顔で俯きながら告げられた台詞。
ガツンッ!!何かで激しく叩かれた様な痛みが頭を襲った。
「白水モテるから頑張らなきゃ俺絶対後悔する。だから告白する。ねぇ三浦…………協力……してくれる?」
嫌だ。諦めろ。そう言いたくて堪らないのに、言って嫌われたくない。
「………………分かった……」
渋々俺は返事をした。
その日の放課後、鳴海は授業が終わるなり急いで学校を飛び出した。
「悪い先帰る」言われたが、何をそこ迄急いでいたんだろう。
不思議だったが、深く考えない事にした。
就寝前『イメチェンしてみた』LINEが来て何をどう変えたか聞いたが明日見せるからって、教えて貰えなかった。
気になって、いつもより早く来てしまった学校。
勿論まだ来てない。
まだかな、まだかな。ワクワクしながら待っていたら、突然教室の入口付近がざわついた。
なんだ?
目線を向けたら
「………………え、鳴海?」
鳴海が有り得ない位変身していた。
殆ど手入れをしていなかったボサボサの長い髪は綺麗に切って整えられ、サラサラになっていた。
一番上迄キッチリ全て止められていたシャツのボタンは第一ボタンを開けた為、白くて細い綺麗な首筋を晒している。
顔を隠していた大きめの黒縁眼鏡は外され、綺麗な色の瞳が見えた。
細身の色白美肌で華奢さと清潔さを感じさせ、キラキラしたオーラを放つ。
一気にもっさりから王子な外見に変わった鳴海は皆から驚愕の目で見られていた。
眼鏡をしていても綺麗だったが、コンタクトも似合っている。
ていうか、綺麗になり過ぎだろうが。
「おはよ。三浦」
キラキラ爽やかな笑顔を振り撒きながら近付いて来た鳴海。
ふわり甘い香りがし
「おはよ。スッゴクびっくりした。似合ってるよ鳴海。凄く綺麗だ」
ドキドキした。
「あの、さ。スッゴイ見られてるけど、その、変じゃない?取り敢えず本とかを参考に爽やかな外見目指してみたんだけど、その……自信なくて」
本当に自信がないのだろう。
少し潤んだ瞳で不安そうに見つめられる。
ヤバイな。めちゃくちゃ可愛い。
「大丈夫。凄く似合ってる。物凄く綺麗でめちゃくちゃ可愛い」
素直に言葉にすると
「…………………………あり…がと……」
顔を真っ赤にして俯いた鳴海。
ちょっ、何?何なんだ、この可愛い生き物。
今すぐにでも抱き締めてキスして、ドロドロになる迄甘やかしながら愛したい。
抱きたい。
生まれて初めてだった。
そう思ったのは。
今迄どんな可愛い子にも綺麗な子にもときめかなかった。
キスしたいと思えないから、勿論それ以上もしたいと思えなかった。
その日初めて俺は抑情した。
親友の筈の鳴海に。
そして、自覚した。
俺は………………鳴海が好きだ。
なのに哀しきかな。
鳴海にとって俺は友人でしかない。
「今から告白してくる。あのさ、もし振られたらその、俺絶対落ち込んじゃうと思うからさ。その時はその…………励ましてくれるか?」
不安に揺れる瞳を見ながら口にするのは愛の告白ではない。
抱き締めたい衝動を抑え込み
「ああ、めちゃくちゃ甘やかすし優しくする。だから鳴海。安心して行ってこい」
親友の顔で励ました。
「……ありがとう」
白水に向かう姿を見送りながら願うは醜い願望。
頼む、どうか振られてくれ。
白水お願いだ、鳴海を振って?
だが願い空しく、鳴海は白水と恋人になった。
付き合い出した鳴海は白水が可愛くて堪らないらしい。
溺愛し過ぎて白水限定で人格を崩壊させた。
折角キラキラで爽やかな外見に進化したのに色々残念過ぎる。
最初は休んでいたせいで授業に着いていけてないのかな?そう考えていたのだが、そうではなかった。
白水はかなりのおバカだった。
何処からどう見ても美少女顔のクセに授業中キュピキュピ変な鼻息を鳴らしながら大口開けて寝る。
英語の授業で英文を読む時は謎の暗号を口にする。
国語の時も同様で漢字に独自のルビを付けて口にする。
両方共、本気で今何処を読んでいるんだ?必死に悩んでしまうレベルだ。
俺にとっては何コイツなのだが、鳴海には違うらしく可愛い、天使って言いながらニマニマしている。
はっきり言って理解不能だ。
俺との時間も今迄通り作ってくれるが、少しでも長く白水と一緒に居たいのだろう。
2人だけで居る時間が減った。
今迄自分にしか向けられなかった視線が、声が、笑顔が、全て白水に向かう。
鳴海が外見を変える迄全く存在さえ知らなかったクセに。
まぁ、地味で目立たなかったから仕方はないが。
絶対以前のもっさりした状態で告白されてたら速攻で断ってただろ?
そう思ってしまう位、俺は白水に嫉妬した。
だが鳴海が俺の側に白水を連れてくるから、最初は嫌だったのに、いつの間にか仲良くなった。
最強我が儘で自由な性格をしているが、いつも明るく元気だし悪いヤツではない。
楽しそうに笑い合う2人を羨ましく感じたが、ゆっくり受け入れた。
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