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三章
「よせ? まだそんなことを言うんですか?」
ネクタイの結び目に手を差し入れ一気にほどいて、
「俺を拒むなら、それなりの代償を払ってもらうまでです」
合わせた両手へぐるぐると巻き付けると、手早く縛り上げた。
「代償って、なんだ……こんなことは、やめろ…」
身体の前で縛られた手首に目を落とす彼に、
見せつけるように大きな音を立てて、デスクのイスをガッと遠くへ蹴り飛ばした。
「…な、なにをっ……」
ビクつく表情に目を細めて、
「……そこのデスクの上に座れ」
と、命令をした。
「デスクの上、って……」
躊躇する彼に、
「座れと言っている」
と、くり返す。
諦めたように座ったところを、下を一息に脱がせた。
「……あっ」と声を上げるのを、「……いい眺めだな」とつぶさに見つめる。
「……どうして、こんな……」
シャツだけを纏い下半身が露わになった恰好で、唇を噛み上目に睨むのを、
「あなたは、俺の所有物だと言ったでしょう」
と、じっと見つめ返す。
「俺の物が、主人であるはずの俺を避けるなど、あり得ない」
言いながら、従順な飼い犬にそうするようにぐしゃぐしゃと髪を撫でた。
「さわる…な…」
唇を噛んだままで、唸りを上げる犬のようにも返す。
「ふん…そんな状態で、よくも言えたもんですね…」
縛っているネクタイをギッと引くと、
手首が締まり、「うぅ…」と呻いた。
「下を脱がされ、手首を縛られて、あなたに何ができるんです?」
訊くと、彼は「クッ…」と悔しげに声を漏らした。
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