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五章
ーーホテルの部屋に入り、ベッドの上に座り込むと、
「……取ってくれ…」
早速に言い出されて、
「何のことですかね?」
と、とぼけた。
「……抜いてくれると、」
「言ってませんが」
語尾に被せるように応えた。
「ホテルに行けばと、おまえが……!」
叫び掴みかかられて、
「俺は、何を抜くとも明言をしていないし、ましてソレを取ることに同意した覚えもありませんよ」
そう言い返すと、
「……騙したのか」
と、上目に睨まれた。
「俺の言うことを、あなたが勝手に信じただけです」
話して、「ですが、」と、言葉を継いだ。
「せっかくホテルにまで来たんですから、俺を楽しませてくれたら、抜いてあげてもいいですよ」
返事もなく、睨みつけたままの彼に、
「……さっきの続きをする気がありますか?」
訊いても反応はないままで、
「返事もないのは、肯定だと受け取りますから」
と、ベッドにその身体を押し倒したーー。
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