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七章
「うぅ…くっそ…」
闇雲に彼を抱いたことも、それを認められない自分も、
何もかも、全てが赦せなかった……。
床に拳を打ちつけて、血が滲み出す程ギリギリと押しあてた。
その手を、
「……よせ」
と、横から取られた。
「……離せっ!」
抗い振りほどいた手が再び掴まれて、
「……よせ、血が出ている…」
言って、拳を自分の唇に持って行くと、滲む血に舌をあてた。
「……ん…」
濡れた舌に沁みる傷口と、そうしてそんなことを不意にされたことに目を見張った。
「…なん…でだ……」
「……自分を、傷つけるなよ…」
口を付けたままで上目遣いに見られて、
「……あんたに言われる筋合いなんかない!」
と、その手を振り払った。
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