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七章
「……慣らされた?」
「俺の手に、あんたの身体は慣らされたのかよ……!」
収まらない怒りの感情ばかりが募り、怒鳴るようにも口にした。
「え……」口をつぐみ、
「……そんなわけ……」と、否定しようとした。
「そんなわけがないと、言えるのか……!」
と、片手で首を絞め上げるようにも掴んだ。
「やめ…ろっ…苦し…い!」
むせながら訴えられて、手を緩めて、
「……俺を、好きになるなよ……」
ぼそりと呟いた。
「……好きに……?」
こちらの気持ちなど何も知らない顔つきが、ただ歯がゆかった。
「……好きになどなるな! 俺を、受け入れるな!」
叫び、彼から離れて、床に突っ伏した。
どうしようもない情けなさが襲い、溢れてくる涙を止めることもできなかった。
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