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エピローグ

 早いもので、夫の取得した休暇もあっという間に最終日となった。  晴樹の肌は日焼けして小麦色になっていた。  日焼けしていない場所は、わずかしかない。  股間から、Vの字に乳首の上を通る、ライン。  そこだけが、晴樹の元々の皮膚の色をしていた。  夫の命令で、あの赤いサスペンダーを着けて、わざと日焼けしたのだった。  そのいやらしい日焼け痕を服の下に隠して、晴樹は恭祐(きょうすけ)とともに帰路につく。  恭祐は、行きも帰りも飛行機のファーストクラスを手配していてくれて、晴樹は窮屈さなど微塵も感じることなく快適な空の旅を楽しむことができた。    帰りの飛行機のパーサーは男性だった。  体格の良い白人のその男は、爽やかな笑顔で晴樹たちを応対してくれた。  夜発の飛行機の機内では、ウェルカムドリンクのシャンパンが振る舞われ、機内食の提供が終わると、ほどなくして消灯となる。  機内の照明が暗くなると、恭祐は早々にリクライニングシートを倒し、寝る体制に入った。    座席はコクーン型のシェルターのようになっていて、他の座席から見えないようプライバシーが確保されている。    晴樹もそろそろ横になろうと、座席のテーブルを収納した。  ……と、そのとき、手が横にあったペットボトルに当たり、水を零してしまう。  ちょうど通路を通りかかったパーサーが目ざとくそれを見つけ、おしぼりを持って駆けつけてくれた。 「お客様、大丈夫ですか?」    消灯後、ということで周囲に配慮した小声で囁かれ、晴樹は上目づかいに男を見て、苦笑を浮べた。 「濡れてしまいました……」  そう言って晴樹が示したのは自身の股間だ。 「中を拭きたいので、そのままそこで、目隠しになっていただけますか?」  小声でそう問うと、パーサーが戸惑ったように曖昧に頷く。  通路との仕切りも閉めてしまえば、なにもパーサーを使わずともズボンを少しずらすぐらいなら可能なのだった。  しかし晴樹は構わずパーサーに背を向ける形でズボンを下ろした。  薄暗がりの中に、卑猥な日焼け痕のある尻が浮かび上がる。    パーサーが息を飲んだのがわかった。  晴樹の尻には……まだ、『Fuck Me』の文字が残っているのだ。    晴樹がシャツをたくし上げ、それがよく見えるようにしてから、パーサーをそっと伺った。      男の手が、するりと文字の上に伸びてきた。 「お客様……これは……」 「少しだけオレを……手伝ってください」  晴樹は吐息の音量でそう言って、男に向き直った。  無毛の晴樹の股間を見て、パーサーの喉が鳴る。    晴樹はさらにシャツを捲くって、パーサーの眼前に乳首を晒した。 「日焼けの跡が痛くて……ローションを、塗ってくれませんか?」     晴樹の問いかけに、男がぎくしゃくと頷き、 「レストルームの方へ」  と晴樹を誘った。  晴樹はシャツとズボンを元の位置に戻し、チラ、と視線を隣の座席へと投げた。  リクライニングを倒している夫は、寝ている……わけではない。    恭祐はぎらりとした眼差しで、晴樹の方を見ていた。    ああ……と晴樹は内心で歓喜の声を漏らす。    夫のこの、嫉妬心に満ちた瞳。  この目で見られることに、晴樹は悦びを覚えるのだ。  そして、夫以外の男に貫かれた後の体を、恭祐に捧げたときに得られるあの、至高の瞬間。  夫の嫉妬と愛で満たされる、あの瞬間。  それを味わうために晴樹は、こうして夫以外の男を誘うのだった。  もちろん、夫の命令で。  行ってきます、と晴樹は声に出さずに、恭祐へと告げた。  愛する夫は唇の端で笑って、嫉妬の色を隠さぬ瞳を眇めた。  戻ってきたら覚えていろよ、とその目が語っている。  晴樹の腰が甘く震えた。  恭祐のその眼差しだけで達してしまいそうだ。  パーサーと睦み合った後、晴樹はどうなってしまうのだろうか。  熱く求められるだろうか。  機内だから、家まで我慢させられるのだろうか。    いずれにしても、恭祐がくれるものならば、晴樹はなんでも喜んで受け入れる。  歪んでいるな、と自分でも思う。  けれどそれは恭祐も同じだ。    愛する夫が歪んでいるならば、晴樹が歪んでいることに、なんの支障があるだろう。    晴樹は恭祐の愛を感じながら、パーサーについて席を立ったのだった。  BL団地妻on vacation~夏しかできないエロがある~ END

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