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窓越しから見える公園を一点に見ながら、ゆっくりと目を閉じる。 あの時は…父さんを待っていたあの時は、マンションから見る公園が楽しみだった。 見るたびに“父さんがいるかもしれない”と、どこか弾むような気持で見ていたからだ。 でも、いつからだろうか…―1人で公園を見るのが怖くなったのは。 「…だめだ、こんなこと考えちゃ。また龍司に怒られる…」 振り払うように顔を横に振れば、自分に気合を入れるために両手で頬を叩く。 「よしっ、早く洗い物終わらせて買い物行かなきゃ!」 俺は窓を背に腕の裾を肘まで捲ると、キッチンへと向かった。 「…湊…。」 公園の中で最も存在感のある大きな大木の陰から人影が現れた。 少し白髪が混じった男の髪は、ワックスで後ろに流すようにきっちり固められ、真っ黒のスーツの上からグレーのロングコートを着ていた。 疲労感が表情に出ており、やつれている様で、年齢よりも少しだけ老けているように見える。 男は切なそうな表情で、公園のすぐそばにそびえ立つ高級マンションの最上階を見あげて呟いた。 「湊…。ごめんな…必ず、迎えに行くから…ごめんな湊」 「お前ごときの身分でよくそんな事が言えるな」 男の後ろから感情のない声が耳に届く。 「っ…!!りゅ…ッ」 「お前みたいな駒に名前を呼ばれる筋合いはない」 「…っ。」 真っ白いコートを着た長身の男がゆっくりと歩き出した。 そして男の前で足を止めると、徐に胸ぐらを掴み、引き寄せる。 「お前が湊に会えることなんて一生ない。会わせない…この俺が。二度とくだらない事を考えるな」 「…。はい…。」 男が諦めた様に目を閉じ、返事をした。 「お前がどうしても寄りたい所があると言うから、お前の成績に免じて寄ってやったが…ここだったとはな」 長身の男が感情のない声で呟くと、マンションを見上げる。 高層マンションという事もあり、最上階付近は下から見てもかなり見えづらく、人が動く姿どころか顔の判別は到底無理だった。 「仕事の時間だ、行くぞ」 長身の男が、近くに停車していた黒塗りの高級外車に歩いていく。 「…はい…。」 男は切なそうな表情でもう一度マンションを見上げ、コートのポケットからサングラスを取り出すと、長身の男の後を追うように車の方へ歩き出した。

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