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3章「歯車は動き出す」
「ん…」
体中の節々の痛さと熱さに目が覚める。
「げほっ…げほっ…あれ…?」
上半身を起こせばズキズキと痛む頭と体中の怠さ、喉の痛さに咳き込んだ。
体中痛い…
「風邪引いちゃったかな…」
熱っぽく、ぼーっとする頭を押さえ、ベッドから降りる。
いつもなら部屋を出るとすぐに香る朝食の匂いはおろか、人の気配すらなく、湊は薄暗いリビングをキョロキョロと見渡した。
「龍司…?」
まだ、寝ているのかな?
「げほっげほ…!昨日帰って来るのが遅かったし、まだ寝ているのかな?」
熱のせいもあって、覚束ない足取りで龍司の部屋へ向かう。
平熱の時と比べてこんなにも歩けないのかと、壁に手を添えながら歩くと、漸く龍司の部屋の前にたどり着けた。
龍司がいる気配が全くしない部屋の扉をコンコン、とノックをするが何も返事はない。
「龍司…?まだ寝ているのかな?ごめんね、風邪引いちゃったみたいでちゃんとしたご飯作れそうになくて…パンで大丈夫?」
扉越しに、寝ているだろう龍司に声をかけるが返事はなく、もう一度ノックをする。
「龍司…?」
おかしい…。
龍司が俺よりも朝起きるのが遅い事はないし、声をかけても無反応なんて今までなかったのに。
「龍司?入るよ?」
そっと扉を開けると、視界に入ってきたのは空になったベッドと、綺麗に整頓された机。
そして、机の上に置いてあるデスクトップパソコンとファイリングされた資料だけだった。
「龍…司…?」
もう出て行ったのかな?
いや、でも今日は土曜日だから仕事は休みのはず
「どこに行ったんだろ…。」
薄暗い龍司の部屋に入ると、カーテンを開けた。
見える景色は、あの時から変わらない公園と、強さを増しながら降っている雨。
最近、外を見るたびに雨が降っているような気がするなと思いつつ、溜息が出てしまう。
雨は好きじゃない。
「今日は雨、か…嫌だな」
どんよりと暗い雲に、どうりでいつもと違って部屋の中が暗いわけだと、俺は胸元の服を握った。
「龍司、どこ行ったの?」
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