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「ふっ…大丈夫だよ、百合亜姉さん。…いつもの事だから、もう慣れた」 目の前まで詰め寄り、じっと見つめてくる百合亜から視線を逸らした。 「馬鹿!!慣れる訳ないじゃない!!龍司…あなた、自分が何を言われているのか分かっているの…?『産まれてこなきゃよかった』なんて親が1番子供に言ってはいけない言葉なのよ!?」 「…。」 「お母様は私がいない時にばかり龍司に酷い罵声を浴びせる…。私がいる時もあなたを…まるでいない者の様に接するわ…そんなの、私が辛いもの…っ」 百合亜が龍司を抱きしめる。 虚ろ気味だった龍司の黒目が開かれた。 つぅ―と、頬に涙が伝い落ちて、龍司は初めて泣いているのだと気づいた。 姉さんを嫌いに慣れたら、俺はただ闇に沈むだけだったのに… 嫌いに慣れたら、どれだけ楽だったのだろう。 姉さんも、俺の為に心を痛める事はなかった。 でも、無理だ。 こんなにも優しくて、俺の為に涙を流す姉さんを嫌いになどなれるはずがない。 「大丈夫よ、龍司…私があなたを守ってあげるからね?」 力強く抱きしめた百合亜がゆっくりと体を放せば、龍司の涙をハンカチで拭く。 綺麗にアイロンがけされ、薔薇の刺繍が施された薄いピンクのハンカチは、百合亜の様に優しい香りがした。

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