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それから龍司は、家に誰もいなくなったのを確認すると、すぐに地下に向かい芹名達と“ある計画”について話を練っていた。 セキュリティがしっかりしすぎている久堂の家とは違い、朋也と百合亜の家の中には監視カメラはなかったため、龍司が地下に行って芹那達と会っている事は、朋也にばれなかった。 芹名達4人に付けられた首輪についても、発信機とGPS機能が付けられているだけのようで、朋也に龍司との会話や情報が洩れる事もないと分かった。 しかし、万が一の事も考え、地下へ入ったという形跡は残さない様に徹底した。 動かしたものは全て原状復帰し、朋也に気付かれないようにする。 芹名達にも、もし朋也が地下室に来る事があれば、いつもと変わらずに接しろと伝えた。 乱闘して少しだけ荒れてしまった地下室ももちろん元に戻した。 ――全てはある計画を実行するため。 絶対に朋也にバレるような事があってはならない。 龍司にとっても、芹那達にとっても今後を左右する大きな計画だった。 ――――** 龍司は、黙々と夕食を食べながら、幸せそうに会話を弾ませる朋也と百合亜をちらりと見た。 テーブルから少しだけ離れた所には、湊が眠るベビーベットが置かれている。 天使の様な表情で眠る湊の様子が視界に映り、自然と顔が緩んでしまった。 「龍司…。明日でここでの生活は最後になってしまうけれど、またいつでも遊びに来るのよ?そして…辛くなったら自分の中に溜めないで、すぐに私に言ってね。分かった?」 寂しそうな表情で行った百合亜が龍司を見つめる。 隣に座った朋也も、百合亜に同意するように『そうだよ。いつでも遊びに来てね』と続けた。 残りの味噌汁を啜り、空になった茶碗をテーブルに置くと、龍司は2人を交互に見てから、少しだけ表情を緩ませながら頷いた。 「…分かったよ。ありがとう…。ごちそうさま」 空になった食器を重ねると、立ち上がってシンクの中へと食器を運ぶ。 「ご粗末様!あ、龍司、いいわ!食器は私が片づけるから、あなたはゆっくり休んでいて?」 「いいよ、これくらい。自分で食べたものは自分で片づける。」 …百合亜ねえさんに甘えてはいけない。 やっぱりここは居心地が良すぎる。 きっと久堂の家に帰ったら、この居心地の良さは一生味わう事が出来ないから。 ――今だけ。 今だけ、自分の事は自分でしたいんだ。 それはきっと、あの計画にも大事な事になってくるはずだから。

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