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「――お前らは、お前らの感情のまま自分達が正しいと思う事をやるんだ。今やっている事が正しくないと思えば、抗 えばいい。朋也に抵抗すればいい。あんな奴のいう事なんて聞かなきゃいい。こんな薄暗い地下に居たくないと思えば出て行けばいい。孤児院から出て、自由になる事が出来たんだろう?もう、感情を殺さなくてもいいんだ。お前らの人生はお前らの為だけのものだ。朋也が使っていいものじゃない。決めて良いものじゃない。お前らの為だけの大切な人生なんだ。こんな所で無駄にするな」
胸倉を掴んでいた手の力を緩めれば、芹那が力なく地面に座り込んで声を上げながら涙を流した。
「ふぇッ…ひっく…ううッ…ひっく…ッ…うわあああッ…」
龍司はその姿を優しい眼差しで見下ろした。
「――ここにいる奴らを全員逃がせ。このままあんなやつの所にいれば、お前達はいつまでも変われない。ただの言いなりの人形のままだ…。居場所がないのなら、おれの所に来ればいい。おれがおまえらを助ける」
「…っ!!」
「…だが、生きていく上で金がなければ生活できない。仕事はおれが与えるから、生活に困る事はないだろう」
おれはなぜ、こんな事を言ったのだろうか。
見ず知らずのこいつらを、なぜか放っておく事が出来なかった。
それはもしかしたら、自分に置かれた環境と似ていると思ったからなのかもしれない。
お前らはおれと同じ環境にいちゃいけない。
いるべきじゃない。
だから、手を差し伸べたくなったのかもしれない。
「約束する事はただ一つだけ。―――絶対におれを裏切るな」
放たれた言葉に芹名の目が大きく開かれた。
「どうする?――お前が自分の意思で決めろ。無理強いはしない」
優しいけど力強い瞳が芹那へと向けられる。
この人に着いていきたい―――芹那は強く想った。
今まで感じた事のない圧倒的なオーラと、上に立つ者に相応しい優しさと器の大きさ。
この人に着いて行けば大丈夫だ。
トモなんかの所に居なくても、この人の所の方がずっと―――。
芹那は龍司の黒曜石の様な瞳をまっすぐに見つめながら片膝をついた。
「―――あなたの所へ行かせてください。約束は必ず守ります」
芹那の返事を受け取った龍司の視線が、少年達が消えた奥の方へと向けられる。
「お前らも出てこい。今の話、聞いていたんだろう?」
龍司の声に3人が姿を現した。
少年達は芹名に続くように、芹那の後ろで片膝をついた。
「お前らも、もうこんな事はしなくていい。おれがここから救ってやる…せっかく孤児院から抜け、孤独から抜け、闇から抜け出せた。例えそれが、朋也がきっかけをくれたのだとしても、抜け出せた事には変わりはない。今まで辛い時期を過ごしてきたお前らは、幸せにならなきゃいけない。なる権利がある。だから、こんな闇の中で働く事はないんだ…。」
切れ長の大きな瞳が4人を見下ろす。
力強いその言葉に、少年達の肩が震える。
般若のお面の下からは、恐ろしいお面にはそぐわない大量の水滴が、ぽたぽたと床に滴り落ちた。
「っふ…ぅく…は、い…っ」
「ありがとう…ございますっ…っく…」
「ふぇっ…ひっく…ッ約束は…絶対に守ります…ッぅ…」
少年達の言葉に、龍司はとても優しい表情で微笑んだ。
―――それが、おれとセリ、アキ、ゼロ、後に出てくるもう一人の配下ルカとの初めての出会いだった。
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