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人間のやる事じゃない。
芹名が静かに頷く。
「ここにいるやつらは大丈夫なのか?」
龍司は “飾られた”人間達が入っているカプセルに視線を向ける。
芹名は首を横に振ると、絞り出す様に言葉を発した。
「…大丈夫じゃないよ。これまで何百体という数の人間が死んでいったし、狂っていった。そうなった人間達は、さっきの3人が殺して、なかったように証拠隠滅をしなきゃいけない。これは…トモからの命令だ…」
――朋也からの命令…か
「お前達もここにいる人間達と同じ“人形”だな。――いや、ここに監禁された人間達よりもよっぽどお前らの方が人形だよ。お前ら4人は、朋也の言いなりになったまま、自分の気持ちを押し殺して、自分達の意思で行動をする事も出来ない弱虫な殺人兵器だ…っ。聞いていて反吐 が出る!!――これはどう見ても、人間のやる事じゃない!お前らはそれを分かっているのか!?」
「っ…!」
「答えろ!!お前らはあの人達の気持ちが分かっているのか!?今まで普通に生活をしてきたのに、あの人達はいきなりその“普通の日常”を奪われたんだぞ!?朋也とはなんの関係もないのに、巻き込まれてしまったあの人達の気持ちが…苦しみがお前らに分かるのかッ!?朋也の胸糞悪い嗜好 だかのためだけに…!!そんなくだらない事の為だけに、あの人達は全員人生を失ってしまったんだ!!!家族や友人、恋人…みんな大切だった人もいたはずだ!悲しむ人だっていたはずだ!!」
「っ…!それは…ッ」
目尻に涙を溜めた芹名が、泣きそうになるのを必死で堪えていた。
力強く握られた拳が小刻みに動いているのが分かる。
龍司は芹那の胸倉を掴んで引き寄せた。
「…お前は…お前らは、こんな所でアイツの言いなりになったまま死ぬのか!?やりたくもない事をやらされて、自分の感情を殺しながら、そのまま死ぬまで自分の意思と反する事をし続けるのか!?」
龍司は、芹那だけではなく、奥に消えた3人にも聞こえるように大きな声で続けた。
「っく…!ぅ、…ひっく…ぅぅッ…!」
芹那の目からは、堪えきれなかった涙が次々と零れ落ちていた。
「お前らの気持ちはどうなる!?なぜアイツの為にそこまで尽くす必要がある!?月嶋朋也に尽くしたいと強く想う程の恩がアイツにあるのか!!?」
「ふっ…ひっく…」
芹那が首を横に振った。
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