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「お前は…やりたくもない事をやらされているのか…?」
掴んだ胸倉を引き寄せながら芹名に確かめれば、顔をあげた芹名と瞳が交わった。
向けられたその瞳には、嘘偽 りなどは微塵 も感じられない。
今日初めて会った人間だ。
素性 も知らない人間を信じている訳ではないが、嘘をついている人間は目を見ればすぐに分かる。
芹那の瞳は嘘をついているような目はしていなかった
「トモはボクとあの3人を孤児院から引き取ってくれた。拾ってくれたんだ…。最初は、トモに対して警戒をしていたのは事実だ。でも身寄りのないボク達を拾ってくれたし…もしかしたら、そこまで悪い人じゃないかもしれないって思う事にしたんだ。…でも、引き取られた後になって分かったんだ。トモがボクらを拾ったのは、初めから人形たちの誘拐と管理をするため。――ボク達を利用したかっただけなんだって」
掴んでいた胸倉を離す。
零れた涙を、白衣の袖で拭きながら悲しみを帯びた声色で芹名が言った。
「…。」
「トモが考えた…人間を人形にするための薬がある。“NT-1099”と言う名称の催眠薬を改良して作り上げたドールドラッグだよ…。トモが月に一回、人形達に打たなきゃいけないNT-1099をこの地下室に大量に持ってくる。ボクは、その薬をここにいる全員の人形達と、新しく入ってきた新入りの人形達 の体に注入するんだ。NT-1099を打つ事で、打たれた人間達は最低限に心臓を動かしながら、呼吸や循環機能だけを残して生存させておく事が出来る。――所謂、植物状態だ。死んではいない。感情なんて何もない中身は空っぽの人間…。生きていく事で必要な機能だけが、かろうじて動いているだけのその状態は、まさに人形 そのもの。その状態が一番美しい状態だってトモは言っていた…。」
「アイツは、ここまでイかれていたのか…。――お前が、ここであの人間達に薬を打って管理をしてるのは分かった。――じゃあさっきの3人は?どういう役割がある?さっき、誘拐とか言っていたな?それはどういう事だ?」
3人が消えていった通路の奥を一瞥 し、芹那に訊ねる。
「3人の役割は、トモが気に入った人を誘拐する時に動かせるメンバーだよ。毎回ではないけど、トモが気に入った人間がいれば、ボクのパソコンにメールが届く。名前・住所・年齢・生年月日・家族構成・スリーサイズ・容姿写真・今いる場所のGPS写真と住所の全てが記入されたデータを見て、ボクが彼らに命令するんだ。」
「――なるほど。…命令された3人は、その人間がいる現在地に出向き、その人間を拉致してここに連れてくる…という訳か。」
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