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芹名は銃を仕舞った少年を向き頷くと、少年は床にうつ伏せになって倒れた2人を抱き上げて奥の方へと連れて行ってしまった。 「…元々、彼ら3人とボクは家族がいない孤児だった。ある日トモの会社で孤児院を支援する話が出て、今までいた孤児院が経営不振でつぶれてしまって行き場を無くしていたボクら4人を、トモは拾ってくれたんだ。」 どこか悲し気な表情で芹那が言った。 「…へぇ。それで?朋也はおまえらに、なぜこんな事をさせる?こんなに沢山の人間を監禁して…あいつは何を考えてるんだ?」 「……。」 言いにくそうに下を向いたままだった芹那が重い口を開く。 「…トモは…、トモは…重度の人形(ドール)マニアなんだ。」 …は? 「人形(ドール)…マニア…?」 なんだそれは… 「人間誰でも、色んな趣味・嗜好は持っていると思う。でも…トモは特殊なんだよ。小さい女の子が人形が好きだと言う“好き”をはるかに超えているんだから…。あんなの、全然可愛い方だ…っ。」 芹那の話している事が理解できない。 「言っている意味が分からない…。もっと分かりやすく言え」 少しイライラ気味で龍司が言った。 「トモは、綺麗な人間をずっとそばに置いておきたいって思っている人間だ。それは昔からずっと…。容姿の美しい人間、それは男女問わずにトモの奥底に眠る人形にしたいという感情が、トモの中で爆発すると、ここにいる人達みたいに…こうやってこの地下室に飾られる。」 「…イかれてる…」 表上は笑顔を振りまいている癖に、心の中ではそんなイカレた感情をずっと抱いていたと言うのか…? それじゃあ、百合亜ねえさんと湊はどうなる…? まさか百合亜ねえさんと結婚したのは、人形にするためだとでも言うのか…? 「ふざけるなッ!!百合亜ねえさんはどうなる!こいつらのように人形にするとでも言うのか!?…冗談じゃない…ッ!そんな事はこのおれが許さないッ!!」 芹名に詰め寄った龍司が、胸倉を掴み引き寄せる。 「いッ…ぐ…!それは…ボクには…分からない…ッ!ボクはただずっと、ここで人形の管理を頼まれているだけだから!もちろんボクだって、これがおかしい事だって分かっている!…でもトモに拾われたボクらは…ッなにも、出来ないんだ…ッ」 従うしかできない。 いくら自分達が望む事じゃなくても。 大きな瞳から涙を流しながら、芹那が絞り出すような声で言った。

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