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振りかざられた日本刀を寸前でかわし、鳩尾 に思い切り拳を入れると日本刀が大きな音を立てて床に滑り落ち、少年が吹き飛んだ。
続けて死角から発砲しようとする少年へ至近距離を詰めると、銃ごとその手を掴み逆方向に腕をひねり上げる。
苦しそうな叫び声が地下室へ響き渡った。
続けるようにそのまま引き寄せると、首元に蹴りを入れる。
少年は面白いくらいに吹き飛んでいった。
「ハッ!この程度で番犬とは…弱すぎるな」
特別な訓練でも受けたのかと思ったが…どうやら勘違いだったようだ。
龍司は倒れ込んだ少年2人を見下ろすと、ぱんぱんと服に付いたごみを払う。
このままリビングに戻れば、地下室へ入った事がばれてしまうかもしれない。
「なっ…!お、まえ…」
あっという間に少年2人を倒してしまった龍司に呆然とする。
「…おいおい。この程度の弱さでよく番犬が務まるな?…そっちの奴は少しばかり体格は良いようだが…期待をしてもいいという事か?」
殺す瞬間を狙っているのか、芹名の前で龍司を見てくるお面の少年に視線を向ける。
先程龍司が倒した少年2人よりも体格は明らかに良い。
子供にしては鍛え上げられている腕が強さを物語っていた。
お面の少年は腰に手を伸ばすと、ホルダーから銃をもう1丁取り出した。
「へぇ…銃2つで来るのか?」
―――それは面白い。
龍司は落ちていた日本刀を拾い上げる。
こんなに面白いものが落ちているんだ。使わない訳にはいかない。
そして少年が、両手に握られた銃口を龍司に向けた――。
「やめろ!」
静まり返った地下室に大きな声が響いた。
声を上げたのは芹那だった。
芹名の声に少年の動きは止まり、銃を腰のホルダーへと戻す。
「…なんだ、始めないのか?」
少しはマシな奴と戦えると思っていたのに。拍子抜けだ。
「始めるも何も、さっきも言った通りだ。君を殺したりはしないよ…。そもそもこいつらの仕事は暗殺と誘拐だからね。」
は?
暗殺と誘拐?
「…どういうことだ?」
龍司は握っていた日本刀を床に投げ、芹名に視線を向け怪訝そうに眉を寄せる。
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