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龍司が婚約者だと決められた七瀬と会ってから、約1年が経った時だった。
漸く薬も完成し、人形として飾られていた人間達の薬の中和も半分だけだが成功した。
セリ曰く、朋也は計画実行まで一度も地下へ下りてくる事はなかったらしい。
全員の人間を地下から脱出させた後は、重要なデータを全てメモリースティックに移動し証拠となりそうなものは全て消し去った。
こんな薬が世に出回れば、大変な事になってしまう。
朋也の様な人間を生み出しかねない。
地下の爆発は、朋也と百合亜が湊を連れて家族旅行に行った時に実行された。
早朝の4時。
仕掛けていた起爆装置は、自動的に爆発するように設定し、誰もいなくなった時を確認した上で起動させた。
爆発によって地下は破壊され、その衝撃で家全体も崩れ落ちてしまった。
もし、誰か人が残っていれば大変な事になっていたかもしれない。
早朝に起きた爆発の衝撃と激しい破裂音だったため、朋也の自宅にはすぐに人が集まった。
テレビにも取り上げられ連日大きなニュースとして取り上げられる事になったが、テロ集団の仕掛けた爆弾によるものだったとの事で、謎が多いまま事件はおさめられた。
恐らく久堂と月嶋が一緒になって動いたのだろう。
人間を誘拐し殺しも行ってきた場所だ。
その犯人が月嶋財閥の跡取りだという事が世間に知られる事になれば、月嶋財閥は終わる。
隠蔽いんぺいするのに動くのは想像が出来る。
そうでなければ、この日本で自宅に爆弾が仕掛けられていたのにもかかわらず、謎が解明しないまま収束する訳がない。
まさか爆破を実行したのが久堂財閥の時期後継者など、誰も予想がつかないだろう。
もちろん龍司が動いた事も、怪しまれる事もなかった。
朋也の自宅周囲にある監視カメラも一緒に破壊したから証拠だってない。
周囲にある監視カメラもすべて調べ上げ、カメラに映らないように徹底した。
何年も練ってきた計画だ。バレる訳がないと龍司は自信があった。
だけど――…。
おれは少し甘く見ていたのかもしれない。
月嶋朋也という、あの男を。
―――おれは気づかなかった。
おれが計画を練っている間に、朋也が新しい行動を起こし始めていた事に―――…。
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