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「…そう、ですか…」 セリの張り付けたような笑顔が気にはなったが、もしかしたらあまり言いたい事ではないのかもしれない。 それ以上は何も聞かないでおこうと言葉を呑みこんだ。 誰にだって言いたくない事や、思い出したくない事だってあるはずだ。 だから無理には聞かない。 その人が話したくなった時に教えてくれれば、それでいい。 ――龍司が言いたがらない俺の昔の記憶の事も、話したくなったらでいい。 俺は龍司が話してくれるまでずっと待ってる。 「龍司…それで?龍司の親御さんはどうしたの?それから父さんはどうなったの?…あと、母さんの事も聞きたい。あと…あとね?教えてくれるならでいいんだけど…10年前、あの公園で会った時よりも前には俺と龍司は会ってない…?」 「湊。一つずつちゃんと答えるから」 「あ、うん…!ごめん」 「だが、百合亜姉さんの事とお前の父さん…朋也の事はこれ以上は話せない。…悪い。これはお前の記憶にも関わってくる事なんだ。――だから話せない。」 「…そっか…。」 龍司から返ってきた返事に、少しだけ残念そうに俯いた。 同時に龍司の大きな手が湊の頭を撫でる。 見上げてみれば、困ったように笑みを浮かべた龍司と目が合って思わず抱き着いてしまう。 「――湊?」 「ごめんね、話したくない事は話さなくていいよ。俺…龍司が話してくれるまで待っているから」 本当は聞きたくて聞きたくて、知りたくて知りたくて仕方ない。 でも、龍司が話したくない事なら…悲しくなる事なら聞かない。 いつか話してくれるその日までは。 「――……あぁ。ごめんな…」 長い沈黙の後、申し訳なさそうに謝った龍司に首を横に振った。 「ねぇ、龍司?話の続き…聞かせてもらえる?」 少しだけ体を離し、龍司に訊ねる。 龍司は湊の瞳を見つめながら、その綺麗な頬に手を添える。 龍司の瞳には、湊の瞳に浮かび上がってきた遠い記憶の残像が映り始めていた。

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