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龍司は天井を見上げていた視線を、ベットに座ったまま涙を流す湊に向けた。
湊は、流れ落ちる涙を懸命に拭いながら龍司に抱き着いてきた。
「うっ…ふっくっ…っりゅ…じ…っ」
「…なんでお前がそんなに泣くんだ。」
湊を腕の中に抱きしめる。
嗚咽 をあげながら泣き続ける湊に苦笑しながら、サラサラの髪をとかすようにそっと撫でた。
「だって…!りゅ、じっふっ…くっ…すごく痛いんだもんっ…!」
「痛い…?湊、どこか痛むのか?」
泣きじゃくる湊の頬に手を添えると、心配そうに顔を覗き込む。
「違う!」
「じゃあどうした…?」
「りゅ…じのっ…心がっ…ふ、っ…痛いんだよ!俺にその痛さがすごく伝わってくるんだっ!龍司の心境を考えると痛くてっ…痛くて痛くて!辛くてっ…誰にも言うことが出来ない辛さも…どれだけ辛くて苦しいんだろうって!それを考えたら…俺っ!俺っ…胸が痛くて、張り裂けそうなんだっ…痛くて、悲しくて辛くて…っどうにかなりそうっ…!」
「――っ!!!」
普通なら自分の父親の事を気にするだろうに…。
お前は、一番に俺の事を心配してくれるんだな。
――あぁ、
やっぱりお前はあの時と変わらない。
俺をこんなにも温かく包んでくれる。
救ってくれる。
あの時から俺が心から好きなのは、お前だけだというのに。
お前の一言で俺はこんなにも満たされるというのに。
「…湊……っ」
龍司の瞳から静かに涙が頬を伝った。
涙を流したのはいつぶりだろうか。
涙などもう枯れ果てたと思っていたのに、俺の中にもまだ残っていたんだな…。
湊に初めて会った時と同じ様に、龍司の心は暖かい光に包まれた気がした。
「…龍、司…様っ」
抱き合う2人をセリは涙を流しながら見つめた。
龍司の話に、昔の事を思い出してしまう。
それは、セリにとって辛かった思い出でもあり、今こうして幸せに暮らしていけるきっかけをくれた龍司と出会えたという良い思い出でもあるからだ。
子供の頃に呼んで以来呼ぶ事がなくなった龍司の名前は、変わらず重みがあってセリにとっては懐かしくて暖かいもの。
漸く涙が引いてきた湊は、赤くなった目元を龍司に向けると静かに口を開いた。
「龍司…それで、計画っていうのはどうなったの…?」
「…あぁ。――地下に捕らわれていた人達の半分は、俺とセリが開発した薬のおかげでNT-1099の効果は中和され、元に戻して解放した。…だが、拒絶反応を起こして命を落とした人達も半分いた…。…地下はその後、起爆装置によって爆発し消滅させた。」
「…そっか…」
龍司の言葉に、セリが分かりやすく肩を跳ねらせた。
気のせいなのか、少しばかり表情も強張ったように感じて湊は首を傾げた。
「…セリさん?どうかしたんですか?」
「あ…いえ。なんでもありませんわ、湊様」
無理して笑ったようなセリの笑顔が引っかかった。
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