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第1話

相棒のチャリを全力で走らせて、市内の大通りを疾走するのがほぼ毎日の日課。 大学の授業が終わり、ワンルームの部屋へ向かう。シャワー浴びてサッパリしたらのんびりと一息ついて。 ここでつい寝てしまうのがいけないのだけども。 目が覚めると、バイト開始時間に間に合うかどうかの瀬戸際。 慌てて着替えてバイト先のカラオケ店まで、チャリで全力疾走しているというワケ。 いつの間にか20分かかるところを10分で到着するようになっていた。 チャリ置き場から3階までの階段が最後の難関だ。 「お、お疲れ様ッス…」 ヘロヘロになりつつ、何とか時間に間に合った俺は、出勤打刻をしながら既に仕事を始めている山崎と岡崎に手を振った。 「また役員出勤なの?いい御身分ですこと!」 コップを拭きながら、岡崎が嫌味たっぷりに小言を投げてきた。 小さいながらもキャンキャンうるさいこの女子はまるで子犬のようだ。お団子を頭のてっぺんで結わえているのは少しでも背を高く見せたいからなのだろうか… 「まあまあ、相澤くんはお忙しいんだから仕方ないと思えよ。それよりさっきの授業のノート貸してくんない?」 媚びるような声をだす山崎は大学に入学した当初からの腐れ縁だ。 いつも俺のノートをアテにしている。 「なによ、また相澤のノート丸写しする気なの?いくら相澤が偉いからって…」 「だってコイツ勉強してねぇって言いながら、川中教授の課題をあっという間にクリアすんだぜ」 「あの川中教授の課題を?…神だわね…」 岡崎と山崎のボケツッコミ話を尻目に、俺は制服でもある黒いエプロンをつけながら適当に相槌を打つ。 この二人、仲が良いのか悪いのかいつも漫才をしている。 チビの岡崎とノッポの山崎。 長い間いいコンビで、周りから付き合っちゃえよと言われてるのにお互いそんな気は全くないらしい。 「誰が神様なの?」 不意にカウンターの後ろから声が聞こえて振り向くと、室内に配置しておく歌本を山のように抱えた佐藤店長がいた。 「わあ、店長!危ないですよぉ!そんな重労働は山崎にお願いしたら良いのにー!」 「なんで俺なんだよ!」 店長は背が低くてひよろっちいんだから無理…とは流石の岡崎も言えず、グッと言葉を飲み込んでいた。 ヨタヨタしたがら店長が歌本を置こうてして、山が崩れかかる。 あああ言わんこっちゃない… 床に散乱した歌本に、店長が力無く笑う。 「やっぱ歌本はもういらないかなぁ」 「タッチパネルの時代っすもんねえ・・」

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